判断の現場に立ち続けるということ
私も、病気や老い、そして死について、不安を感じざるを得ない年代になりました。
これは、特別な感慨でも、殊勝な悟りでもありません。
年齢を重ねれば、誰にとっても自然に立ち現れる感覚です。
ただ、ここで一つ、はっきり言えることがあります。
あなたがいま直面しているのは、
老いでも、病でも、死でもありません。
いま、あなたの目の前にある「現実」
このページを読まれている方の多くは、
- 経営権をめぐる対立
- 事業や会社の存続を賭けた交渉
- 多額の債務、取引先との緊張関係
- 人間関係が絡み合った、簡単には割り切れない紛争
といった、人生の中でも最も負荷の高い局面に立たれているはずです。
頭では分かっている。
しかし、判断が鈍る。
一歩を踏み出す決断が、どうしても遅れる。
そのとき、多くの方が感じている正体不明の不安は、
「老い」や「死」そのものではありません。
判断を誤るかもしれない恐怖です。
不安の正体は「未来」ではなく「判断の停止」
私は弁護士として、数多くの紛争や修羅場を見てきました。
その経験から断言できます。
人を最も消耗させるのは、
状況の厳しさそのものではありません。
決断できない状態が長く続くことです。
- どこまで争うのか
- どこで引くのか
- 何を守り、何を切るのか
これらが曖昧なまま時間だけが過ぎると、不安は増殖します。
やがてそれは、老い・健康・死といった、より根源的な恐怖と結びついていきます。
「命拾い」と専門家の役割
以前、私は
「『命拾い』と専門家」という文章を書きました。
そこに込めた意味は、
専門家とは、不安を消す人ではない
という点にあります。
専門家の役割は、
- 正解を与えることでも
- 未来を保証することでもありません。
依頼者が、もう一度“判断できる位置”に立ち戻ることを支える
それが本質だと考えています。
年齢を重ねたからこそ果たせる役割がある
私自身、若い頃のように無理はききません。
しかしその代わりに、
- 力関係の変化を読む速度
- 人の心理の揺れを察知する感覚
- 「この争いは、どこに向かうか」を見通す勘
は、明らかに研ぎ澄まされてきました。
老いは、衰えだけをもたらすものではありません。
判断の質を高める側面も、確かに存在します。
いま必要なのは「安心」ではなく「整理」
あなたに必要なのは、
「大丈夫ですよ」という慰めではありません。
- いま何が起きているのか
- どこが核心なのか
- 何を選び、何を選ばないのか
それを一度、冷静に整理することです。
恐怖は、状況が分からないときに最大化します。
構造が見えれば、人は再び動ける。
最後に
老い、病、死――
それらを考えること自体は、決して無意味ではありません。
ただし、人生最大の局面に立っている最中に、
思考の焦点をそこに置きすぎる必要はないと、私は思います。
まずは、
いま目の前にある判断を、正しい位置から行うこと。
そのために、専門家が存在します。
もし、
「一人では整理しきれない」
「判断の軸が揺れている」
そう感じておられるなら、
一度、状況を言葉にするところから始めてみてください。
そこから、次の一手は必ず見えてきます。
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