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第38回 債権回収~医療機関の未収金の場合~

月刊「財界さっぽろ」2014年9月取材

会社を守る法律講座

前田 最近、債権や売掛金回収の相談が増えています。

―― これまでの不況の時期のほうが相談者が多いのでは。

前田 そうでもないようです。不況の時期は、何をやったら良いのかわからなくなってしまい、問題を放置してしまう。公共になると、新しい展開ばかりではなく、きちんと足下を固めていくことも積極的に考える経営者が多くなります。そのような状況に乗り遅れる企業は、将来が暗いですよね。
例えば、いりょういりょうにより経営が圧迫されていることは周知の事実ですが、最近、これらを放置したままにせず、きちんと対応する動きが見られます。

保険診療の場合、医療費の未収金の対象は一部自己負担分で、社会一般の債権よりも延滞・焦げ付きの可能性が低いと思われがちですが、入院費の延納や救急搬送で後日支払う場合など未収金をつくってしまう場合は実は多いのです。

また、保険料の滞納者は、診察報酬を全額自己負担しますから、延滞・焦げ付きの対象となります。もっともこの場合、生活状態の悪化で支払能力がないこともあります。未収金の法的処理は、回収ばかりに目を奪われず、回収の見込みがない場合は税務上償却(損金処理)し、払い過ぎた税金の精算なども複眼的に考え、対応策を講じなければなりません。

―― 保険外の自由診療は、すべて患者の支払い能力によりますね。

前田 患者自身が全額負担する自由診療は、延滞・焦げ付きの対象となりやすいように思えますが、美容外科や審美歯科などの患者は、相対的に支払能力が高いと推察されます。〝支払能力があるのに支払わない〟というケースが多く、費用をかけて回収措置をとる価値はあります。ただ、治療結果の不満がある場合も考えられ、法的観点からの検討が不可欠です。

―― そのほかの留意点は。

前田 法的対抗措置をとろうとする場合、診療報酬は時効期間が3年と短いため、消滅しないよう配慮した手続きが必要です。『請求書を送り続ければ時効が完成しない』と思っている人が多いようですが、完全な誤りです。また理不尽な非難を受けないため、医療の公共性という支店、コンプライアンスの観点からも、適切な方法とプロセスを検討するべきです。

このように、医療費の延滞・焦げ付きの解決は、専門的知識と熟練したスキルが必要です。単に回収の必要性ばかりではなく、費用、その後の適切な処理に加え、社会批判の対象とならないよう、また、手遅れにならないよう早い時期に専門家に相談してください。
前田尚一法律事務所では、医療機関の債権回収相談に応じています。

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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