LINE時代のコミュニケーションと「意思表示」・「信用性(証拠価値)」の危うさ
LINEは、もともと家族や友人との気軽な連絡や気持ちの共有を目的として発展してきたツールです。
そのため、即時性・非公式性・曖昧な返答を許容する性質が強く、「内容を十分に検討したうえで確定的な意思を表明する手段」としては、そもそも設計されていませんでした。
ところが、利用者の急増とともに、現在では業務連絡や職場の指示、取引関係の連絡といった、公的・準公的な場面でも広く使われるようになっています。
しかし、これらの場面に適した「利用ルール」や「責任の範囲」は十分に整理されておらず、結果として、私的な使い方のクセがそのまま公的領域へ持ち込まれているのが実情です。
“実態や本意を必ずしも反映しない”メッセージが生まれる理由
日常会話でも、形式的に「ありがとうございます」「すみません」を何度も繰り返す場面があります。
看護師や介護士が何度も「ごめんなさいね」と声をかけるのも、決して“謝罪”が目的ではなく、関係を穏やかに保つための潤滑油としての側面が強いと言われます。
こうした「言葉の意味」よりも「関係の維持」を優先するコミュニケーションは、LINEの場面ではさらに顕著に現れます。
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上司や取引先からのメッセージに、とりあえず即返信する
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深く考える余裕がないまま「了解です」と返してしまう
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とにかく「今は角を立てない返事」を選びがち
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このように、その場しのぎの暫定的な応答が増えやすくなっています。
「削除・編集が容易」という特性が確定的意思を曖昧にする
書簡やメールと異なり、LINEでは
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送信後の削除
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編集(修正)
が容易にできます。
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この「いつでも直せる」という感覚が、
“今このメッセージに確定的な意思を込める必要はない”という心理を生みやすく、意思表示の確定性を弱める原因にもなっています。
公的なトラブルに発展しやすい理由
こうしたLINE特有の性質を踏まえると、LINE上のメッセージが
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本当の意思
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法的な意思表示
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契約上の合意
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として扱えるのかどうか、慎重な判断が必要です。
「言った/言わない」「了解した/していない」などの紛争の種になりやすいのも、この構造的理由によるものです。
まとめ
LINEの特性とその公的利用における問題点を踏まえ、LINEのやりとりでのメッセージについての、当事務所の担当案件での経験と実践を基に、
意思表示の確実性や証明力(≒証拠価値)といった視点からお伝えいたしました。






