札幌市中央区南1条西11-1コンチネンタルビル9階
地下鉄東西線「西11丁目駅」2番出口徒歩45秒

「秘密保持契約書」の僅かな修正要求が、優位なビジネス関係を確立する「ジャブ」となった事例

顧問先の新規事業(ジョイントベンチャー)において、相手企業から提示された秘密保持契約書(NDA)のチェックをご依頼いただきました。提示された契約書は、相手企業が秘密情報の「権利者」、顧問先が「義務者」という、極めて一方的な内容となっていました。

もちろん、契約書の内容を精査し、顧問先のリスクを最小限に抑えることは法務の基本的な役割です。しかし、当事務所がこのケースで重視したのは、「契約書」という形式を巡る対応を通じて、相手企業との今後の力関係を確立するという、より戦略的な視点でした。

 

提案:一方的な契約書を「対等」な契約書へ

 

具体的な提案として、相手企業が権利者、顧問先が義務者とする一方的な文面について、**「甲及び乙は、相手方に対し、秘密保持義務を遵守する」**といった、双方が権利者かつ義務者となる対等な表現に修正することを要求するようアドバイスしました。

この要求の真意は、単なる法的なリスクヘッジに留まりません。顧問先が相手企業に対し、事実上、優越的地位に立っているわけではないという客観的な事実がある場合、適時適切な「ジャブ」を打つことで、相手方に不当な優位性を意識させないことが極めて重要です。

この修正要求は、顧問先が対等なパートナーシップを志向していることを示し、無意識のうちに相手方に優位性を与えてしまうことを避けるための戦略的な一手でした。

 

結果:関係性の力学が変化

 

当事務所のアドバイスに従い対応したところ、相手企業は特に問題視することなくこの修正要求に応じました。

さらに重要な変化は、その後の相手企業の対応です。彼らは、顧問先が一方的な要求をのむべき立場にないことを理解し、対等な関係に基づいた行動をとるようになったのです。契約書の形式的な修正要求を通じて、両社間の力学と心理戦に優位な変化をもたらすことに成功しました。

 

契約書チェックを超えた、企業戦略の最適化

 

当事務所では、単に「契約書に不備がないか」という法務の観点だけでなく、ご相談いただいた企業の事業実態、独自の志向、経営者のキャラクター、そして両社間に働く見えない力学を総合的に想定します。

契約書の作成やレビューという場面は、単なる事務作業ではなく、相手方との関係性を定義し、将来のビジネスを優位に進めるための戦略的な機会です。当事務所は、形式に囚われず、顧問先の利益を最大化し、最適化された戦略的判断を提供します。

前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

dbt[_C24 \݃tH[