■ 背景:提示された「秘密保持契約書」に潜む落とし穴
顧問先の中小企業から、「取引を進めるにあたり、相手企業から提示された秘密保持契約書をチェックしてほしい」との相談を受けました。
提示された契約書は、相手企業が権利者、顧問先が義務者とされる一方的な内容。
開示された秘密情報の取り扱い義務や違反時の措置など、全てが顧問先に不利に構成されていました。
こうした「形式上はよくある契約書」こそ、実は交渉上の“力関係”を象徴する文書です。
契約書を単なる書面作業と捉えるか、それとも関係構築の一手と見るかによって、結果は大きく変わります。
■ 対応:まず“ジャブ”を打つ ― 対等な立場を形にする
当事務所から顧問先に提案したのは、
一方的な文言を**「双方が対等に権利・義務を負う」形に修正することを要求する**というアプローチでした。
たとえば、
「甲は乙に対し……」
という表現を、
「甲及び乙は、相手方に対し……」
と改めるよう求める、という具体的な指示です。
これは、単なる文言変更ではなく、
“交渉の主導権を取り戻す一撃目(ジャブ)”でもあります。
■ 結果:主導権の回復と、相手企業の態度変化
顧問先がこの提案通りに対応した結果、
相手企業は特段の抵抗もなく修正を受け入れ、
むしろ当初の要求を引き下げ、実質的に対等な立場で協議を進めるようになりました。
この一件は、「契約書の文言調整」という表面的な作業の裏に、
企業間の心理戦と関係構築の主導権が隠れていることを示す好例です。
■ 弁護士コメント:契約書の“形”に囚われるな
契約書レビューというと、「法的なリスクを減らすための確認作業」と考えがちです。
しかし、実際の現場ではそれ以上に、相手との関係性・力学・心理を見抜く洞察が重要になります。
特に中小企業の場合、「秘密保持契約」や「業務提携契約」の一つひとつが、
今後の取引関係を左右する“関係構築の布石”になることも珍しくありません。
当事務所では、契約書の条文チェックにとどまらず、
企業の実態・経営者の志向・相手との関係構造まで踏まえた実戦的なアドバイスを行っています。
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■ まとめ
秘密保持契約書のチェックは、単なる法務作業ではなく、
企業の立場を確立するための“戦略的コミュニケーション”でもあります。
あなたの会社の契約書、本当に対等な関係を築ける内容になっていますか?