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第70回 突然、出頭要請が来る!他人事ではない「労働審判」

月刊「財界さっぽろ」2018年12月取材

会社を守る法律講座

裁判所から労働審判手続申立書等が送付され突然の出頭要請がくる

労使間紛争に悩む経営者A氏が相談に訪れました。以下談話です。

A氏 裁判所から労働審判手続申立書等が送付され、出頭するよう呼び出されました。

前田 労働審判手続は、労働者と事業主との間に生じた労働紛争について、実情に応じた柔軟な解決を迅速・適正かつ実効的に図るため、2006年から始まった制度です。全国で年間3300~3700件ほどの申立てがあります。

1人の労働審判官(裁判官)と労働関係の専門的な知識経験を有する労働審判員2人で組織する労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で事件の審理を終えてしまいます。ずは話し合いでの解決を目指して調停を試みますが、調停で解決できない場合は労働審判で解決案の提示をします。納得できなければ異議の申し立てをできますが、法律に従って申し立てをしないとその内容で確定するため、相手方は強制執行が可能となります。

A氏 先月に退職した従業員によるものですが、納得できません。まずは何をすべきでしょうか。

前田 原則、異議の申立ての第1回期日は申立日から40日以内と決められていますが、第1回期日前の提出期限までに自分の言い分を書いた「答弁書」と、言い分を裏づける「証拠書類」を提出しなければなりません。遅くとも第2回の期日が終了するまでに提出を終える必要があります。ただ、なれない作業を自分でおこなうと、労働審判委員会や相手方に主張が正確に伝わらない心配があります。

A氏 そんなにタイトに答弁書と証拠書類を用意できませんよ。

前田 確かに書類等の作成は大変で時間もかかります。しかし、大事なことは自分の主張を正確に伝えること。労働審判手続を申し立てられた数々の経営者から相談を受けましたが、その多くが自分の価値観でものを考え「実際にはこうだ」「申立てをした従業員本人が知っている」と言います。

しかし、労働法はもともと労働者保護の観点で制定されています。労働者に有利であり、経営者からすると裁判所は労働者寄りとしか思えない判断を下すのです。労働法の分野では労働者側の慎重な意思の確認が求められ、事実関係・意思の確定性・確実性が重要となり、書面化が重視されます。つまり、経営者の考える道理は通用しません。それに気づかずに突き進めば、予想外の結果になります。

A氏 どうしたらよいのですか。

前田 自分の価値観にとらわれず、労働審判委員会がどのように解決しようとしているのかを観察し、事を運ぶことです。労働法に関する十分な知識や民事訴訟についての経験を有した弁護士に頼るほかないでしょう。労働審判に限らず、労働事件に巻き込まれた場合にすべきことは、その場をどうしのぐかということに加え、今後同じ問題が発生しないようにどうすべきかを考えることです。

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表弁護士
出身地:北海道岩見沢市。
出身大学:北海道大学法学部。
主な取扱い分野は、交通事故、離婚、相続問題、債務整理・過払いといった個人の法律相談に加え、「労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」も取り扱っています。
30社以上の企業との顧問契約について、代表自身が直接担当し顧問弁護士サービスを提供。

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