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第10回 カリスマ経営者と事業承継問題

月刊「財界さっぽろ」2012年02月取材

会社を守る法律講座

――成功した経営者の特徴には、どんなものがありますか。

前田 結論からいうと、事業のすべてをコントロールし続けたことです。アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ペゾスは起業当初、ほとんど会社を離れず、重要な仕事はすべて自分でこなしていたのは、その典型でしょう。

――企業は、経営者だけで成り立っているわけではありません。

前田 経営者が組織、端的に言えば、他人の力を借りる必要があるのは確かです。成功哲学の祖といわれるナポレオン・ヒルは著書、『思考は現実化する』(きこ書房)の中で、世界の自動車王ヘンリー・フォードの逸話を紹介しています。とある新聞社がフォードを〝無知な平和主義者〟と論評。名誉毀損(きそん)で裁判となりました。法廷で新聞社側の弁護士は、フォードが無知な人間であることを証明しようと、一般知識の質問攻めにしました。フォードは、「自分のデスクの上にたくさんのボタンがあり、必要としている知識を持った部下がすぐ来てくれる。なぜ一般的知識を詰め込んでおく必要があるのか」と述べています。企業が大きくなれば組織の拡大は自然なことです。しかし、卓越した経営者は、すべてをコントロールできる仕組みを作り、組織や人を活用しています。トップは孤独といわれますが、自分の置かれた状況を直視し、冷徹に乗り越えているのです。そういう意味では、昨年末に死去した北朝鮮の金正日総書記がタイムリーな話題です。

――国家の代表を、企業の経営者として捉えるわけですね。

前田 はい。金正日は、善悪という視点を別とすれば、見事なリーダーともいえます。存命中、国際的にも国内的にも極めて危機的な状況にありながら、自国を完全にコントロールしきったわけですから。民衆からの私刑で命を落とした、リビアのカダフィー大佐とは一線を画しています。2人とも、享年が満69歳。ポル・ポト、フセインらと同じという独裁者の不思議な偶然を感じますが…。

――有能なトップが急死したあとは、後継者問題が浮上します。

前田 卓越した経営者が事業を完全にコントロールすることができた背景には、固有のカリスマ性や経営者個人のパーソナリティーが大きな役割を果たしています。事業承継というと、遺言書の作成とか節税対策といったことに目が奪われがちですが、実は経営者個人のパーソナリティーを代替することが最も重要なのです。金正日後継となる金正恩の権力掌握が進むかどうかは、この承継が上手くいくかどうかです。当事務所では、本気で事業承継対策を考えている経営者の方を応援しています。気軽にご相談ください。

 

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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