土木、建築、設計、施工という行為は,法律の整備に先行して生活の必要から生まれたものですから,その中の仕組みも,実務での現実の必要が,関係者の力関係,現場での知恵,長年の経験などを要因に,仕組みとして形作られていくのは当然の流れです。
したがって,法律家であっても,教科書的な法律論ばかりではなく,業種,業態特有の仕組みを踏まえた上でなければ,事の本質を見失うということにもなりかねません。
そうしないと,弁護士であれば,紛争の解決・予防を有利に展開するキモを見落とすことになりかねないし,裁判となれば,このキモを裁判官に教えていかなければなりません。
例えば,工事代金についても,法律書の中には見られませんが,実務上では,違和感なく,「請負」と「常用(常傭)」と呼ばれる区別がされています。
「請負」は,注文者が業者に注文した仕事を完成させたら、代金をもらえる契約であり,「常用(常傭)」とは,一定の仕事を決められた時間で完成することとし,人工単価による労働実績払いで代金を受け取る契約と説明されます。
そして,後者は,比較的小さな仕事に対して採用される方法であり,工事期間が短いのが通例であるなどといわれます。
しかし,この説明ですと,「常用(常傭)」は,実務で「請負」と呼ばれる契約と区別されているので,別物のように見えますが,本来的には,民法上の「請負」に該当するはずの契約であると考えれます。
それにもかかわらず,法律が想定した規律と異なった思惑から,請負以外の実態を備えているような場合,人工出し,常用人工派遣,偽装請負など呼ばれる場面でと同様,違法な労働者派遣,注文者との間の雇用関係の成否などの法律問題が発生することが考えられるのです。
特集「弁護士による建設業の法律相談」は
こちらをどうぞ。