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「秘密保持契約書」締結の場面でのジャブを打ちによる優位な関係を確立

顧問先から、「秘密保持契約書」のチェックを頼まれました。
ジョイントベンチャーを仕掛けている相手企業から提示された秘密保持契約書をチェックして欲しいという依頼です。
相手企業が開示する一定の秘密を、顧問先が開示などしないことを義務付けたり、違反の場合の措置を定めるなどの内容です。

顧問先にまずその場で提案したのは、提示された秘密保持契約書の相手企業が権利者、顧問先が義務書とする一方的な文面について、双方いずれもが権利者、義務者として遵守する内容に変更することを要求すべし、ということでした。
つまり、まずは、「甲は、乙に対し、…………。」といった表現を、「甲及び乙は、相手方に対し、…………。」という表現に改めることを求めるようにとアドバイスしました。

契約書の作成などを求められると、ついそれ自体に囚われて動きがちです。もちろん契約書のレビューはそれ自体大事なことです。
しかし、法務部門を備えた大会社などの場合と、中小企業の場合とでは、そもそも「秘密保持契約書」が持つ意味が大きく異なるものです。

「秘密保持契約書」の取り交わしという形だけに囚われると、相手方との力関係などの考慮なども蚊帳の外に置かれてしまうことにもなりがねません。
実際、この例では、顧問先は、相手方とは対等であって、相手方が、事実上、優越的地位にあって要求に応じていかなければ、前に進まないという現実がある、という訳ではないと言うのです。
そうであれば、適時、ジャブを打ちながら、優位な関係を作り上げっていくことに注力した方が生産的であろう、ということです。

実際、私が言うとおり対応したら、何事もなく相手企業は応じ、しかも、元々の要求をできるような立場にはないことを理解した行動をとるようになったということです。

事例を単純化して紹介しましたが、もちろん、顧問先のことですから、相談を受ければその場で直ちに、企業としての実態や実情に加え、独自の志向、そして経営者のキャラクターやパーソナリティーまでイメージでき、今しようとしていることの位置付けが思い浮かび、見えないところの力学と心理戦を想定しての判断ができます。

しかし、顧問先の場合のように最適化というレベルまでは行かなくとも、契約書の作成などを求めらたような場合、直ちにその形ばかりに囚われて動くのではなく、事態と関係性を客観的に把握して、なすべきことに注力することが不可欠です。

 

前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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