札幌市中央区南1条西11-1コンチネンタルビル9階
地下鉄東西線「西11丁目駅」2番出口徒歩45秒

「どの口が言う?!」、「言行不一致」が企業を滅ぼす?弁護士が説くリーダーの信頼構築とリスク管理

1 「どの口が言う?!」

自民党の高市早苗総裁の「ワーク・ライフ・バランスを捨てる」との発言が波紋を広げています。
《「ワーク・ライフ・バランス」行方は 高市氏、労働規制緩和に意欲―自民党》

しかし、自分自身の姿勢を明らかにし、自民党の在り方を述べたもの。
弁護士として紛争を数多く見てきた立場からすると、
こうした“発言の切り取り”や“批判の応酬”は、実は日常的なトラブルの構図と驚くほどよく似ています。

クラスに、一生懸命勉強をする人がいたら、「あいつのせいで、俺まで勉強しなければならない。」と言うのと同じ論理構造。
努力する人を批判する構図は、組織内の競争心理にも通じるものです。
この言動への過剰な批判構造は、政治の世界だけでなく、企業社会におけるハラスメントや労務紛争で起きる構造と酷似しています。

高市氏の発言に対し、フジテレビ佐々木恭子アナウンサーが強く反応したと報じられています。
《中居氏・フジ問題の“被害者”佐々木恭子アナが絶大存在感も…また消える?『サン!シャイン』の1年危機》
佐々木アナウンサーに対しては、“中居正広氏に関する一連の問題に巻き込まれてしまった”との同情派がいるとしても、現在はまだ“渦中”の人。公的な人間としての発言としては、「どの口が言う」と、違和感を覚える人も少なくないでしょう。

もっとも、こういった著名人の発言に対する評価というのは、「押し」するかしないかについての利害関係がある。
または、端的に、私的な“好き”、“嫌い”に関わるものかもしれませんね。結局のところ、こうした発言評価には感情のバイアスが入りやすい。だからこそ、冷静な事実認識が必要です。
敢えて「どの口が言う?!」という表現を用いてみましたが、感情的な応酬となれば、そのものが現代社会の特徴をよく表しているようにも思えます。

2 言葉は「力」となる。誤解が紛争を生むことも

私は、かつて次のような記事を投稿したことがあります。

口は災いのもと。取り返しのつかない事態になることも

「尾を引く丸山議員戦争発言 問題行動も次々 道内外で広がる波紋」―日刊紙のニュースサイトの見出しです(毎日新聞・デジタル毎日2019/5/27 05:00)。

いかにどのような弁護を試みても、特定の発言が決定的となる時代。かつては、酒席での発言は何かと割り引かれる傾向がありましたが、今や「酒は善人をも狂わせる」と言うより「酒は普段その人が取り繕い覆い隠している本性を暴く作用として働いた」というのが、社会に受け入れられる考えのようです。

丸山穂高議員(当時)の発言は、内容は論外としても、非難・攻撃のプロセスがステレオタイプ・紋切り型に進んでいくのが現在の特徴です。

言葉の意味は“文脈と関係性”で決まる

私たちの日常、特に企業経営の現場でも同じ構造が見られます。
時代遅れの喩えかもしれませんが、次のように述べると理解しやすいでしょう。
「キミの瞳に乾杯」と同じ言葉あっても、キムタクに言われるのと、斜め横に座っている課長に言われるのとでは、受け取る印象の程度どころか、快・不快が正反対になりかねない、ということです。
「関係性による意味の変化」を理解せずに発言すると、
思いもよらぬトラブルに発展することがあります。

唯一間違いのない答えはありません。一例として、セクハラ・パワハラなどでトラブル化・紛争化する場面を想像してください。

言葉が引き起こす力学は、そこにかかわる人の「関係性」で働きが変わり、発言した本人の意図とは別に、その言葉自体の意味が確定します。もちろん、社会の風潮にも影響されるでしょう。

いずれにせよ「正論」「失言」「暴言」がどのように評価されるかは、本人の意図とは全く別に確定するという現実は認識しておかなければなりません。発言がすべてスマホで容易に録音されてしまう現在、何かのプロジェクトを進める場合、この認識・理解を組み込んで構築することが不可欠です。

言葉の一つが、意図しない誤解を生み、法的トラブルにつながる。
退職勧奨や解雇の場面では、一言が命取りになります。

実際に、何気ない一言が証拠として残り、会社側に不利な結論をもたらす事例を多く見てきました。
発言一つがスマホで記録され、SNSで拡散される今、
「言葉の管理」は経営リスクマネジメントの重要課題です。
発言・発信を管理する意識を持ちましょう。

当事務所では、こうした現実を踏まえた経営者・管理職向けセミナーとして、「解雇・退職勧奨でやってはいけないこと」を企画しています。

退職勧奨や人事対応の場面で、どんな言葉が致命傷になるのか、実例をもとにお伝えしたいと考えています。

そして、セミナーでの学びを実務に定着させるためには、日常的な予防チェック体制が欠かせません。
顧問弁護士としての継続的サポートも、あわせてご検討ください。

前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

dbt[_C24 \݃tH[