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法律は正しかった。それでも負けた ― 高裁裁判官が「文化」を共有していなかった事件

法律ではなく「裁く人」を読まなければならなかった事件

事案の輪郭

ゴルフ会員権をめぐる紛争でした。

業界の慣行や実情を前提にすれば、
こちらの主張は十分に通ると考えられる事案です。

契約書の構造も明確で、
過去の裁判例の流れとも整合していました。

実際、地方裁判所では、
こちらの主張が認められ、勝訴しています。

表面上の争点

      • 契約条項の解釈

      • ゴルフ会員権取引における業界慣行の評価

いずれも、法律家としては
正攻法で組み立てる争点でした。

本当の問題

問題は、控訴審で顕在化しました。

高等裁判所の裁判官が、ゴルフという文化をほとんど知らなかった。

こちらが「当然」と思っている前提――

      • 会員権が持つ意味

      • ゴルフ場と会員との関係性

      • 業界慣行が形成されてきた背景

それらが、
裁判官の世界観と、ほとんど共有されていなかったのです。

地方裁判所では通じた前提が、
高等裁判所では、前提として扱われなかった。

ここに、見落としがありました。

判断の転換点(と、限界)

控訴審では、主張の組み替えを試みました。

専門性を深掘りするのではなく、
裁判官の理解可能な世界に翻訳する。

      • なぜ、それが合理的なのか

      • なぜ、一般人の感覚から見ても納得できるのか

      • ゴルフを知らなくても理解できる説明になっているか

しかし、控訴審という構造上、
時間も、説得の余地も、限られていました。

結果として、
高等裁判所では結論が逆転し、敗訴となりました。

この判断在庫が示すもの

この事件は、
「法律が間違っていた」から負けたのではありません。

裁かれる側の世界と、裁く側の世界が、
決定的にずれていた。

そのズレを、
もっと早い段階で前提として織り込む判断ができたか。

紛争は、
法律で裁かれているようでいて、
実際には 人によって裁かれています。

相手の「理解の地平」を読めなければ、
正しさは、最後まで武器にならないことがある。

それを、はっきりと突きつけた事件でした。

 

👉 この事例で用いている「判断在庫」という考え方については、
こちらで整理しています。
判断在庫とは何か ― 勝つためではなく、人生を壊さないための法的判断

前田 尚一(まえだ しょういち)
弁護士として30年以上の経験と実績を有し、これまでに多様な訴訟に携わってまいりました。顧問弁護士としては、常時30社を超える企業のサポートを直接担当しております。
依頼者一人ひとりの本当の「勝ち」を見極めることにこだわり、長年の経験と実践に基づく独自の強みを最大限に活かせる、少数精鋭の体制づくりに注力しています。特に、表面に見えない企業間の力学や交渉の心理的駆け引きといった実務経験は豊富です。 北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校、北海道大学法学部卒業。

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