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第66回 企業間訴訟増加。中小企業も〝明日はわが身〟

月刊「財界さっぽろ」2018年06月取材

会社を守る法律講座

 前回、地方裁判所に提起された民事訴訟事件における新受件数の推移をお話しました。「過払い金返還請求事件」の急増が2009年。その後減少に転じ、近年は再び増加傾向にあります。

ある著名な裁判官経験者によると、企業同士が原・被告となる訴訟が増えてきており、企業間での紛争を司法の場で決着つけようとする姿勢が顕著になってきたとのことです。こうした動きは、これからますます加速するでしょう。

森友事件のように、行政絡みの事件がいつの時代も脚光を浴びます。しかし、社会全体について見ると、ビッグバン、規制緩和が大きく実現した現在、個々の事案について行政の設定するルールの力は弱まっています。入口での事前規制がされないのであれば、紛争が起きるのは当然です。真に譲れない場面では出口である「司法」で事後的にチェックされるという構造になるでしょう。

ただ、企業間訴訟の現状は、まだ大きな企業同士のケースが多いと推察されます。中小企業の場合、取り引き先の大企業を相手に物申せば、仕事がもらえなくなるといった心配があります。理不尽な場面でも泣き寝入りすることが多かったのではないでしょうか。

しかし、大量生産、大量消費の時代は終わり、社会は地殻変動を起こしています。企業は売上至上主義では生き残っていけないのが現実です。特に中小企業は自社の独自性を基に必要なものを見極め、ピンポイントで活動していかなければ、存続は難しいでしょう。

中小企業の公正な取り引き環境の実現を目指し、下請け取り引きの適正化が現代の潮流になりつつあります。つまり、トラブル・紛争に対してどのような姿勢をとるのか、将来を見据えた上で、確固たる意思を持って決断する場面が増えてくるということです。訴訟提起がより身近なものとなり、現実的選択肢になってきます。

弁護士も企業に対し、型どおりのサービスを提供しても存在意義はありません。個々の企業と手と手を取り合う深い関係を構築しながら、それぞれの志向に合わせて個別具体的なサービスを提供する必要があります。発展途上である現在のAIでは対応できないであろうマインドやスキルが肝です。場数で培った経験と訴訟のマインド・スキルを活用し、例えば元請会社に訴訟を提起すべきかどうか、弁護士として有益・有用なアドバイスをしなければなりません。

自分なりの弁護士像を持ち、必要なマインド・スキルを研鑽・錬磨し続けることが生き残る道です。〝弁護士大増員時代〟を迎えた現在、弁護士になっても、それが難しい環境になったようです。多様な事件と対峙しながら実戦経験を積み、実力をつけたいという司法修習生や若手弁護士がいれば、当事務所は歓迎します。

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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