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第5話 言動に注意。言葉が一人歩きする時代

月刊「財界さっぽろ」2019年07月取材

生活に潜むリーガルハザード

口は災いのもと。取り返しのつかない事態になることも

「尾を引く丸山議員戦争発言 問題行動も次々 道内外で広がる波紋」―日刊紙のニュースサイトの見出しです(毎日新聞・デジタル毎日)。

いかにどのような弁護を試みても特定の発言が決定的となるのが今この時代の現状です。かつては、酒席での発言は何かと割り引かれる傾向がありましたが、今や「酒は善人をも狂わせる」と言うより「酒は普段その人が取り繕い覆い隠している本性を暴く作用として働いた」というのが、社会に受け入れられる考えのようです。

丸山穂高議員の発言は、内容は論外としても、非難・攻撃のプロセスがステレオタイプ・紋切り型に進んでいくのが現在の特徴です。

言葉の受け取り方は、関係性や容姿でも異なる

しかし、自分の言動がステレオタイプ・紋切り型に決め付けられるのではたまりません。考えてほしいことは、どのように問題発言と確定されるか、ということです。

唯一間違いのない答えはありません。一例として、セクハラ・パワハラなどでトラブル化・紛争化する場面を想像してください。時代遅れの解説かもしれませんが、次のように述べると理解しやすいでしょう。キムタクに言われるのと、斜め横に座っている課長に言われるのとでは、同じことを言われても受け取る印象の程度どころか、快・不快が正反対になりかねない、ということです。

言葉が引き起こす力学は、そこにかかわる人の「関係性」で働きが変わり、発言した本人の意図とは別に、その言葉自体の意味が確定します。もちろん、社会の風潮にも影響されるでしょう。これは、本誌での前連載「会社を守る法律講座」第54回「〝有罪の推定〟が働けば、白でも黒に」で詳しくお伝えしたところです。

いずれにせよ「正論」「失言」「暴言」がどのように評価されるかは、本人の意図とは全く別に確定するという現実は認識しておかなければなりません。発言がすべてスマホで容易に録音されてしまう現在、何かのプロジェクトを進める場合、この認識・理解を組み込んで構築することが不可欠です。

職業柄、多くの失敗を見てきましたので、企業経営者・経営幹部向けセミナー 「解雇・退職勧奨でやってはいけないこと」を開催することにいたしました。

解雇が難しい場合、退職届さえとればよいというお手軽なやり方がいかに危険か、ある一言が致命的となること、退職勧奨を成功させるにはどのような方法をとるのがよいのかをお伝えする企画です。

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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