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第15回 中国iPad訴訟から学ぶべきこと

月刊「財界さっぽろ」2012年07月取材

会社を守る法律講座

――海外進出する企業が増える中、商標権の対立が発生しています。中国では「森伊蔵」「伊佐美」「村尾」「松阪牛」「コシヒカリ」「九谷焼」などの商標を日本の業者が使えないという事態になっていると聞きます。仮に外国企業と訴訟になった場合、どんな点に注意すればいいでしょう。

前田 具体例としてiPad商標権訴訟を取り上げましょう。「iPad」は、アメリカのアップル社が2010年に発売しました。ところが中国企業の唯冠科技は、2000年にすでに〝IPAD〟の商標権を取得したとしています。アップルはこの商標権は買い取ったと主張していますが、唯冠は、売却した商標権の中に中国本土の商標権は含まれていないと反論しているのです。訴訟自体について、どちらの法的主張が正しいか報道だけでは判断がつきません。ただ中国の裁判所は3月31日、台湾の債権者からの唯冠に対する破産宣告申し立てを受理しないと裁定しました。4月24日には、中国の国家交渉行政管理総局の副局長が、「唯冠側の商標登録は今でも合法である」との考えを示すなどの出来事もあり、アップルが負ける可能性も高いです。

――この訴訟から何を学ぶべきですか。

前田 単に訴訟の在り方といった問題だけではなく、国家を背景とした交渉ということを理解することです。日本人は〝正義は勝つ〟とどこかで信じています。うまくいかなくても、「なんとかなるさ」と考えて、いつのまにか忘れてしまう民族性を持っています。社会が成熟していて、生理的欲求や安全欲求が脅かされるまでに至らないという理由もあるでしょう。しかし中国はそうではない。いかに今、経済的に上り調子といっても、国民の政府に対する抗議行動が即時暴動化しかねないというのが実情。国をまとめるために13億の国民から弱腰と見られないことが何よりも重要です。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の対応からもおわかりでしょう。交渉で〝無理を通して道理を引っ込ませる〟のです。

――確かに、日本人は交渉が苦手です。

前田 私たちは、交渉といえばどのように譲歩して話をまとめるかという視点で相手を直視しがちです。しかし相手によっては、こちらを見ずに、もっぱら背後の調整に最大の労力を費やしている場合があるということを認識すべきです。相手の理解を十分把握した上で、狡猾に進めていかなければ交渉を有利にまとめることはできない。上記のような国際間の訴訟はもちろんですが、交渉全般について重要な考え方です。
(前田尚一法律事務所は、交渉事などの法律相談に対応している。0120・48・1744へ)

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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