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第19回 セクハラ・パワハラに対処せよ!

月刊「財界さっぽろ」2012年11月取材

会社を守る法律講座

――セクハラは、一般にも認知された言葉となりました。

前田 当初は職務上の立場や権限を利用して、性的な要求をする場合(対価型セクハラ)が想定されていたようです。今は、性的言動によって職場の環境に悪影響を与える場合(環境型)なども含まれるようになりました。

――違法とされる範囲が広がったということですね。

前田 例えば、20分間抱きつかれて猥褻な行為をされたというケース。かつては被告側が、逃げたり、助けを求めることができるはずなので、被害者の供述は信用できないと主張したこともありました。しかし現在では、職場での上下関係などを考え、そのような行動をとらない場合もあるとしてこうした主張を退けています(東京高裁の平9・11・20判決)。

――パワハラという言葉も耳にするようになりました。

前田 セクハラと同様、他者の人格を傷つける行為のひとつと捉えられます。法律の中に登場する用語ではありませんが、違法対象を、性的要素を伴わない場面に広げる中で作られた言葉です。同様に、モラハラという言葉も生まれました。上司によるものではないとか、陰湿な非有形力によるものであるなどです。パワハラと区別して説明されることもありますが、明確な定義はありません。

――社員同士の問題でも、使用者に責任があるのですか。

前田 社長や院長が事件を起こさない限り、関係ないと思い込んでいる使用者がおられますが、大間違いです。使用者の職場環境についての法的義務が強化されるようになり、平成19年に施行された改正男女雇用機会均等法は使用者に対して、セクハラの事前防止と、発生した場合に対処し措置を講ずる義務を明記しています。従業員が職場でしたセクハラなどについて、使用者が損害賠償責任を負うことがあるのです。

――パワハラは法律上の規定がないのでは。

前田 「法律の規定がなければ、法的義務を負うことがない」という考えは重大な誤りです。セクハラの法規制が確立されたのは平成9年の雇用機会均等法改正です。しかし、セクハラ訴訟として不法行為責任が認められた裁判として、既に平成2年に判決があります。明文の法律がなくとも、裁判所が独自に判断し、法律に先行して法を創造していくこと(判例)も少なくないのです。違法対象が拡大される方向にあるという認識をもって下さい。世間から企業が加害者側と見られた場合、信用失墜、風評被害につながり、ダメージが大きい。職場環境配慮義務を負う使用者としては本腰を入れ、積極的に対応しなければなりません。

 

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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