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第23話 世間がどのように捉えるか。名誉毀損訴訟の今

月刊「財界さっぽろ」2021年02月取材

生活に潜むリーガルハザード

名誉毀損の条件は社会的評価の低下から

「爆笑問題・太田さんの『裏口入学』記事、新潮社が敗訴」

朝日新聞デジタル(2020年12月21日)の記事の見出しです。

雑誌、新聞、放送などマスメディアの名誉毀損は、とても関心の高い話題ですが、その話題もまた、マスメディアが公表します。現在はWEBニュースが主流で、読者・視聴者の受け取る印象が形成されていくプロセスは、複雑骨折のような枠組みで益々複雑になっています。

そこで、法律的観点から名誉毀損の紛争について整理してみます。

裁判所の判例でいう「名誉」とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的価値のことを指します。つまり、各人が思う主観的な感情は含まれないとされています。

そして「名誉毀損」とは、事実を摘示して社会的評価を低下させることを指しますが、マスメディアによる名誉毀損の場合、低下したかどうかは一般の読者や視聴者の捉え方を基準として判断されることになります。これがとても難しいことです。

情報化社会の現実忘れられるニュース

名誉毀損自体は、それが真実かどうかは問われません。しかし、公表された事実(正確には「摘示事実」と呼ばれ、一定の限定があります)が公共の利害に関して公益を図る目的でなされた場合、マスメディア側はそれが真実であると証明するか、真実だと信じるに値する理由(相当な取材をしたとき)があれば、不法行為責任を免れることができます。

このように整理すると一見簡単そうですが、実際に名誉毀損訴訟で攻防が繰り広げられると、マスメディアも会社の看板があるので熾烈な闘いになるのが通例です。

マスコミは「迅速な報道」「報道の自由」「取材源の確保」「報道機関に対する社会的要請」などと理念的なことを持ち出しますが、一方では営利企業です。そして、当然ながら個々の記者の功名心なども含まれますから、訴訟の中では〝いかがなものか〟という主張に遭遇することもあります。

また、相当な取材をしたと主張する場合であっても、危ういものも少なくないというのが、訴訟という現場での印象です。

冒頭で紹介した「『裏口入学』記事事件」ですが、敗訴した新潮社側は「記事の真実性を認めなかったのは大変遺憾。ただちに控訴し、さらに主張を深めて立証したい」とコメントを出し控訴し、太田さんも控訴したようですし、これからも目を離せませんね、との定番で締めくくりたいところです。

しかし、ニュースはあっという間に忘れ去られます。理屈と現実のギャップは普段意識しませんが、とても大きく、ある意味致命的な面もあると思います。

 

前田尚一法律事務所:フリーダイヤル 0120・48・1744

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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