震災の暗闇と顔認証 ―「平時の便利」が非常時に通用しないとき
――「平時の便利」が、非常時に通用しないとき
平時には、これほど便利なものはありません。
スマートフォンの顔認証は、画面を見るだけでロックが解除され、指一本動かす必要もありません。
しかし、地震が起きた直後、停電で部屋が真っ暗になったときはどうでしょうか。
揺れの中で姿勢が定まらず、顔が認識されない。
そもそもスマホがどこにあるのか分からない。
ようやく見つけてライトを点ければ、今度は肝心の電池が急速に減っていく。
平時の便利さが、そのまま非常時の安心にはならない。
この当たり前の事実は、私たちが思っている以上に重要です。
問題は「誰が悪いか」ではありません
この話は、通信会社や製品メーカーを非難するためのものではありません。
スマホが役に立たないと言いたいわけでもありません。
法的に見れば、スマートフォンは防災専用品ではなく、多目的デバイスです。
企業は売るための情報提供を行い、行政の防災啓発も、どうしても抽象的になりがちになります。
その結果、そこには
誰のせいでもないが、誰も守ってくれない――
「責任の空白地帯」
が生まれます。
利便性に潜むリスクを、最終的に引き受けるのは誰なのか。
この問いは、防災に限らず、法律や経営の世界にも、そのまま当てはまります。
私たちは、いつも「現実から」考えます
前田尚一法律事務所が大切にしているのは、法律や制度を机上で語ることではありません。
実際に、何が起きるのか。
人は、どこで立ち止まり、どこで判断を誤るのか。
前提が崩れたとき、その仕組みは本当に機能するのか。
顔認証が「明るく、落ち着いている」ことを前提にしているように、
法律や契約もまた、多くの前提条件の上に成り立っています。
私たちは、その前提が崩れた場面から逆算して、法務を考えます。
「暗闇のスマホ」と、法的トラブルの共通点
企業経営や紛争の現場で、私たちが数多く目にしてきたのは、次のような状況です。
契約書は整っている。
手続も形式上は問題ない。
しかし、現実には深刻なトラブルが起きている。
原因の多くは、「平時を前提に作られた仕組み」が、非常時に耐えられなかったことにあります。
震災の暗闇でスマホを探す不安と、
紛争が起きてから契約書を読み返す不安。
この二つは、驚くほどよく似ています。
当事務所が重視する「予防」という考え方
私たちは、トラブルが起きてから「誰が悪いか」を争うことだけを仕事にはしていません。
それ以上に重視しているのが、
「起きてしまう前に、何ができたか」
という視点です。
防災で言えば、
スマホに蓄光シールを貼る。
枕元に靴や懐中電灯を置く。
「もしも」の状況を、平時に一度でも想像しておく。
こうした泥臭い「自助」の積み重ねが、暗闇での行動を支えます。
法務も同じです。
派手な理論よりも、現実に機能する備えこそが、最大のリスクマネジメントになります。
結び:暗闇を照らす一歩を、今ここから
法律は、将来の不安を減らすための設計図です。
私たちは、依頼者の皆様が「想定外」に直面したときでも、迷わず判断できる状態をつくることを目指しています。
それは、早く終わらせることよりも、
後悔しない選択を支える法務です。
形式的な正解ではなく、現実を直視した判断をしたいと感じたときは、どうぞお気軽にご相談ください。
前田尚一法律事務所は、現実から逆算する法務で、あなたの歩みを支えます。






