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白い白馬は、助けに来ない――企業判断で本当に効くのは何か

最近、「白馬が現れた」という表現を思い出す報道記事を目にしました。
しかし、その出来事を丁寧に追うほど、私は強い違和感を覚えました。

本当に白馬は、助けに来たのでしょうか。
それとも――ただ、そこに立っていただけなのでしょうか。

白い白馬は、助けに来ない
――フジHDの株主構成から見える「判断しない力」

目にしたのは、
『フジ・メディア・ホールディングス、東宝が筆頭株主に 議決権比率は約13%』という見出しです。
物言う株主が後退し、既存の安定株主が前面に出たとの見出しで、
「白馬が来た」場面と理解したのです。

しかし、流れは、必ずしも、「助けに来た白馬」とはいえないものでした。
ニュースを読み進むと、フジ・メディア・ホールディングスの大規模な自社株買いを経て、東宝が筆頭株主に浮上したということでした。
ところが、その出来事を追うほど、私は別の構図が思い浮かんできました。

 

一般に、ホワイトナイト(白馬)とは、
敵対的買収や株主からの強い圧力にさらされた企業を、
能動的に救済する第三者を指します。

株式を引き受け、資本関係を組み替え、
経営の主導権を守るために「動く」存在です。

ところが、今回の件で筆頭株主となった**東宝**は、
新たに株を買い増したわけでも、救済を宣言したわけでもありません。

ただ、動かなかった
その結果として、相対的に最上位に立っただけです。

ここに、私は「白い白馬」という別の姿を見ます。

 

白い白馬は、助けに来ません。
最初からそこにいます。

派手な行動も、劇的な登場もありません。
しかし、長年の関係性、価値観、立ち位置が、
結果として「防衛線」になります。

今回、フジ・メディア・ホールディングスが行ったのは、
白馬を呼ぶことではなく、
自社株買いによって地形を変える判断
でした。

その地形の上で、
動かない存在が、最も強い意味を持つ位置に残った。
それだけの話です。

 

この構図は、法律相談や経営判断の現場でも、何度も目にします。

相談者の多くは、
「何か決定的な一手はないか」
「今から逆転できる白馬はいないか」
と考えます。

しかし実際には、
紛争の帰趨を分けているのは、

・過去にどんな契約を結んできたか
・誰と、どういう距離を保ってきたか
・どの場面で、あえて動かなかったか

といった、積み重ねられた判断です。

白い白馬は、
トラブルが起きてから現れるのではありません。
相談に来られた時点で、
すでに「いるか、いないか」が決まっていることがほとんどです。

 

問題は、白馬が来るかどうかではありません。
どんな構造を作ってきたかです。

派手な判断は目につきます。
しかし、後から効いてくるのは、
静かで、説明されにくい判断です。

動かなかったこと。
保った距離。
切らなかった縁。

それらは当時、評価されることはありません。
しかし、時間が経ったとき、
最も大きな意味を持つことがあります。

 

当事務所の法律相談は、
「すぐに結論を出す場」ではありません。

まず、
何が問題で、
どんな判断が積み重なってきたのかを整理します。

白馬を探す前に、
自分の足元に、白い白馬が残っているかどうかを見るためです。

判断は、行動だけでなく、
不作為にも宿ります。

そのことを、忘れずにいたいと思います。

前田 尚一(まえだ しょういち)
弁護士として30年以上の経験と実績を有し、これまでに多様な訴訟に携わってまいりました。顧問弁護士としては、常時30社を超える企業のサポートを直接担当しております。
依頼者一人ひとりの本当の「勝ち」を見極めることにこだわり、長年の経験と実践に基づく独自の強みを最大限に活かせる、少数精鋭の体制づくりに注力しています。特に、表面に見えない企業間の力学や交渉の心理的駆け引きといった実務経験は豊富です。 北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校、北海道大学法学部卒業。

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