法律ではなく「裁く人」を読まなければならなかった事件
事案の輪郭
ゴルフ会員権をめぐる紛争でした。
業界の慣行や実情を前提にすれば、
こちらの主張は十分に通ると考えられる事案です。
契約書の構造も明確で、
過去の裁判例の流れとも整合していました。
実際、地方裁判所では、
こちらの主張が認められ、勝訴しています。
表面上の争点
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契約条項の解釈
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ゴルフ会員権取引における業界慣行の評価
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いずれも、法律家としては
正攻法で組み立てる争点でした。
本当の問題
問題は、控訴審で顕在化しました。
高等裁判所の裁判官が、ゴルフという文化をほとんど知らなかった。
こちらが「当然」と思っている前提――
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会員権が持つ意味
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ゴルフ場と会員との関係性
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業界慣行が形成されてきた背景
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それらが、
裁判官の世界観と、ほとんど共有されていなかったのです。
地方裁判所では通じた前提が、
高等裁判所では、前提として扱われなかった。
ここに、見落としがありました。
判断の転換点(と、限界)
控訴審では、主張の組み替えを試みました。
専門性を深掘りするのではなく、
裁判官の理解可能な世界に翻訳する。
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なぜ、それが合理的なのか
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なぜ、一般人の感覚から見ても納得できるのか
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ゴルフを知らなくても理解できる説明になっているか
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しかし、控訴審という構造上、
時間も、説得の余地も、限られていました。
結果として、
高等裁判所では結論が逆転し、敗訴となりました。
この判断在庫が示すもの
この事件は、
「法律が間違っていた」から負けたのではありません。
裁かれる側の世界と、裁く側の世界が、
決定的にずれていた。
そのズレを、
もっと早い段階で前提として織り込む判断ができたか。
紛争は、
法律で裁かれているようでいて、
実際には 人によって裁かれています。
相手の「理解の地平」を読めなければ、
正しさは、最後まで武器にならないことがある。
それを、はっきりと突きつけた事件でした。
👉 この事例で用いている「判断在庫」という考え方については、
こちらで整理しています。
「判断在庫とは何か ― 勝つためではなく、人生を壊さないための法的判断」






