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生成AIは社会を「救う」のか ―― 技術の加速と、人間の判断 ――

生成AIは社会を「救う」のか
―― 技術の加速と、人間の判断 ――

生成AIの急速な進化を前に、「社会は一変する」「仕事や教育の前提が崩れる」といった言説があふれている。対話型AIが難関試験に合格し、ホワイトカラーの仕事を代替するという指摘も、もはや珍しくない。技術開発競争は激化し、その「加速」は止められないようにも見える。

だが、その語り口がしばしば見落としている点がある。それは、生成AIがもたらす変化が、どの規模の社会に、どのような形で作用するのかという尺度の問題である。

そもそも生成AIは、人間のように状況を理解し、考え抜いたうえで結論を出しているわけではない。過去の膨大な言語データをもとに、文脈上「次にもっとも自然に続く言葉」を選び重ねているにすぎない。

文章が滑らかで整っているため、私たちはそこに判断や洞察を読み込みがちになる。しかし、それはAIが考えているからではなく、人間が意味を与えているからだ。これは知性というより、極めて高度な物語生成能力といえる。便利である一方、そこには危うさも潜む。

この「物語化」は、未来予測の場面で特に強く現れる。技術が加速し、ある臨界点を越えれば世界が一変する――そうした構図は分かりやすく、希望を喚起する。しかし現実の社会は、そのような直線的な変化を容易には受け入れない。

新しい技術は、必ず摩擦を生む。事故が起き、責任の所在が問われ、紛争が生じ、制度化や規制が議論される。そこでは「できるかどうか」以上に、「誰が責任を負うのか」「どこまで許されるのか」が問題になる。技術の進歩がいかに速くとも、社会の合意形成が同じ速度で進むとは限らない。

とりわけ、法や倫理の領域ではそうである。自動運転、医療AI、生成コンテンツの著作権、フェイク情報――いずれも技術的には前進しているが、社会実装は段階的で、限定的であり、ときに立ち止まる。この遅さこそが、人間社会の現実でもある。

生成AIが普及すればするほど、むしろ重みを増すのは人間の判断だ。不確実な状況の中で、リスクを引き受け、説明責任を果たし、最終的な決断をする。その役割は、データや物語では代替できない。

技術の可能性に期待を寄せること自体は否定されるべきではない。しかし、生成AIが描く未来像を、そのまま現実の延長として受け取ることには慎重さが求められる。AIが示すのは、あくまで整理された言葉の連なりであり、社会の選択そのものではない。

技術は進む。
だが、社会を動かすのは、いまも人間である。

前田 尚一(まえだ しょういち)
弁護士として30年以上の経験と実績を有し、これまでに多様な訴訟に携わってまいりました。顧問弁護士としては、常時30社を超える企業のサポートを直接担当しております。
依頼者一人ひとりの本当の「勝ち」を見極めることにこだわり、長年の経験と実践に基づく独自の強みを最大限に活かせる、少数精鋭の体制づくりに注力しています。特に、表面に見えない企業間の力学や交渉の心理的駆け引きといった実務経験は豊富です。 北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校、北海道大学法学部卒業。

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