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第23回 医療機関の未収金対策

月刊「財界さっぽろ」2013年3月取材

会社を守る法律講座

――医療機関においても、未収金により経営が圧迫されています。

前田 病院に限らず社会全般で未収金が増えています。例えば、利益率5%の会社で100万円の焦げ付きが発生した場合、最低でもその20倍、2000万円を売り上げなければなりません。額面どおり100万円稼ぐだけでは資金繰りは悪くなる一方です。
医療機関の場合、公的・私的を問わず問題となるのが医療費の未収金です。保険診療の場合、延滞・焦げ付きの対象は一部自己負担分で、社会一般の債権よりも延滞・焦げ付きの可能性が低いと思われがちですが、入院費の延納や救急搬送で後日支払う場合など、未収金を作ってしまう場面が実は多いのです。 また、保険料の滞納者は、診療報酬を全額自己負担しますから、延滞・焦げ付きの対象となります。もっともこの場合、不況の影響などで生活状態が悪化し、支払能力がないこともあるため、未収金の回収のために費用をかけるのは得策ではない場合が多いでしょう。

――保険外の自由診療部分は、患者の支払能力によりますね。

前田 患者自身が全額負担する自由診療は、延滞・焦げ付きの対象となりやすいように思えますが、美容外科や審美歯科などの患者は、相対的に支払能力が高いと推察され、延滞・焦げ付きが発生するとすれば支払能力があるのに支払わないというケースでしょう。したがって、費用をかけてでも回収措置をとる価値はありますが、治療結果に不満がある場合には、対応を間違えると大きな紛争に発展しかねませんので、支払わない理由を事前にきちんと確認すべきです。

――そのほかの留意点は。

前田 法的対抗措置をとろうとする場合、診療報酬は時効期間が3年と短いため、消滅しないよう専門的な手続きが必要です。『請求書を送り続ければ時効が完成しない』と誤解している人も多いようです。また、医療の公共性という視点で非難を受けないために、コンプライアンスの観点からも適切な方法とプロセスを検討したほうがよいでしょう。加えて回収の見込みがない場合は税務上償却(損金処理)し、払いすぎた税金の精算も考えなければいけません。
このように、医療費の延滞・焦げ付きの解決は、専門的知識と熟練したスキルが必要な分野です。債権回収の法的手段を一般向けに解説した本を読むのもよいですが、単に回収すればよいということではなく、社会的批判の対象とならないよう、また、手遅れにならないよう早い時期に専門家に相談されることをお勧めします。
(前田尚一法律事務所では、医療機関の債権回収相談に応じている。0120・48・1744へ)

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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