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第67回 最高裁判決が下る!「同一労働同一賃金」

月刊「財界さっぽろ」2018年07月取材

会社を守る法律講座

――「同一労働同一賃金」に関する2つの事件で、去る6月1日に最高裁判決が出ましたね。

前田 はい。契約社員であるドライバーが提起した「長沢運輸」事件と、定年後継続雇用したドライバーが提起した「ハマキュウレックス」事件です。期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定めた労働契約法20条の下、正社員と非正規社員の待遇格差の是非を巡るものです。最高裁の判断は、いずれの事件も「同一労働であっても、待遇格差があれば直ちに不合理となるのではなく、また、不合理であっても労働条件が同一となる訳ではない」としましたが、賃金あるいは諸手当の支給の格差は不合理だとして、諸手当の損害賠償請求を認めました。

この判決を聞いて、安心した経営者もいるでしょうが、最高裁の判断を厳粛に受け止めるべきです。

まず、今までのように正社員と非正規社員を区別した雇用・賃金調整が難しくなったことを認識すべきです。また、最高裁は、諸手当の支給の有無の不合理性を機械的に判断できる基準を示した訳ではありません。社会の構造変化と労働環境の変容に左右されるものです。「電通過労自殺」事件で労務トラブルが社会問題化しました。政府が「働き方改革」を推進し、労働者の「権利意識」が高まることで、不合理と判断される場面は徐々に拡大していくでしょう。

――企業は早急に対策をしなければなりませんね。

前田 待遇格差の是正は、正社員の待遇をそのままに、非正規社員の待遇をそれに近づけるわけですから、経費がかさみます。拙速にやり方を間違えると収益構造が崩壊しかねません。同時に、経営者側が考えるべきことは、ここ数年に急激に進行した人手不足への対策です。人材の確保・定着の観点からすると、むしろ積極的に待遇格差を是正していかなければならない場面が到来しています。

――ただ、経費抑制の視点で考える経営者が多いように思えます。

前田 意外とそうでもありません。最近、当事務所では前述した「労働者の権利意識の高まり」「人手不足」を踏まえ、労務トラブルに関するセミナーを始めたところですが、社会福祉法人の経営者に対するセミナーでは20人を超える応募がありました。これから実施する社会保険労務士向けのセミナーでは、60人以上の応募があるなど、時代を見据えて一歩先を見ている方も多い。既に実施した前者の参加者の中には、具体的対策をお手伝いしている方もいます。

「同一労働同一賃金」の問題は、既に動き出している「有期契約社員の無期転換制度」と、これから施策化していく「働き方改革」の土台にあり、統一的な対処が必要です。お手軽な付け焼き刃の方法に飛びつくのではなく、現状をきちんと分析し、慎重に進めるべきです。ご相談いただければいつでもお手伝いいたします。

 

 

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サンプル⇒「働き方改革関連法」中小企業の時間外労働の上限規制導入は?

前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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