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弁護士の選び方

Q.自分自身のために頼りになる弁護士はどのように選んだらよいでしょうか。

A.何か機会を見つけて、まずは,面談してみることです。ピンと来なければ依頼しなければいいだけのことです。
“相性”のいい人でないと、何事も上手くいきはしません。

経営者のパートナーである「顧問弁護士」をキーワードとして、新進気鋭のA社長と当事務所の顧問先でA社長の先輩であるB会長の会話で紹介します。

■嫌なら代えろ!顧問弁護士

A社長 顧問弁護士をお願いしたいと思うのですが、どのような点に注意して選ぶべきですか。

B会長 実力不足の弁護士は問題外ですが、相性があうかどうかが一番のポイントだろうね。

A社長 相性とは具体的にどのようなことでしょう。

B会長 会社の実情、ビジネスの内容、経営者自身の個性などによって異なるだろう。例えば、法律問題が発生し、経営者が徹底して闘うと決意したのに〝和を以て尊し〟とするタイプの弁護士では、相手方に一方的に押され事態が悪化することもある。争いばかりを好む弁護士が適切とはいえないが、紛争やトラブルはうやむやにせず闘わなければ解決できないことも多々あるしね。

A社長 そうすると、きちんと話を聞き、身内のように親身になってくれる弁護士が良いですね。

B会長 その通り。でも注意しなければならないのは、顧問弁護士はわれわれ経営者の愚痴を聞くとか、同情してもらうために依頼するわけではないということ。問題解決に向けて協働作業をしていく関係が理想。経営者は自分の置かれた状況を全て知っておく必要があるし、そのために弁護士はトラブルの個性や特殊性を具体的に把握し、今後どのように解決するのが適切か、われわれにきちんと説明できるかが重要だね。

A社長 弁護士を使う機会が多いB会長の現実的な意見ですね。

B会長 事件が多くて弁護士と接触が多いのではなく、何かと不安なことが起きたらすぐに顧問弁護士に相談するようにしているよ。

A社長 そんなに相談する機会がありますか。

B会長 ふと不安や悩みが脳裏をよぎったら、気の向くままに相談すればいい。われわれは法律の専門家ではないから、不安や悩みが法律問題であるのかどうかさえ、認識できるとは限らない。相談することで、法律問題の存否、法的リスクの有無を理解できる。われわれが思っているのと全く別問題が隠されていて、ただちに対処しなければならないこともある。私はむしろ、頻繁に弁護士を使う工夫をしている。勉強も兼ねてね。だからストレスもため込まないよ。
良い顧問弁護士を探すのは、最高の治療を受けるために名医を探すのと同じ。とにかく会ってみないと。ピンと来なければ依頼しなければいい。実際、私もどうも合わなくて、過去2度ほど顧問弁護士を変えているよ。

■弁護士は、自分の好みで選べ!

A社長 おっしゃるとおり実力不足の弁護士は問題外ですが、医者と違って弁護士との付き合いはイメージが湧かないのです。

B会長 イメージが湧かない理由は、医者と違ってかかわる機会が少なく身近ではない点だろうね。われわれ経営者仲間の中にも、土日に行きたいとか、仕事が終わらないと行けないなど言う人がいるが、風邪をひいたら会社を休んで病院にいくだろう。本人は気づいていないけど、実は無意識に弁護士とかかわらないで済む理由を探し、先延ばしにしているんだよ。

A社長 どうしても頼まなければならない場合もありますよね。

B会長 その通り。私のように思いついたらすぐ連絡して解決し、自分の本来の仕事に専念するため弁護士を上手く利用している人は少ないけれど、どうしても頼まないとならないことはあるよね。餅は餅屋。専門家に頼まなければ進まないこともある。
弁護士選びに迷ったら、やはり信頼のおける人からの紹介が一番。ただ、確率が高くなるだけで最後は自分で決めること。私が連れて行ったスナックがキミの好みだとは限らないだろう。

A社長 難しいですね。私は人を見る眼に自信がなくて…。

B会長 この世にただ1人と確信して結婚したのに、すぐに離婚という話はよくある。弁護士選びも同様。よさそうな人を選び、ダメならやめるのさ。当社の顧問弁護士は以前の弁護士に不満を抱いていたころ、たまたま飲み屋で意気投合した人なんだ。
だいたい、弁護士自体が増えすぎてる。競争原理が働き質が向上するとか、選択の幅が広がったという見方もあるが、私は幻想だと思うよ。むしろ質は全体として下がっている印象。1回で最適の弁護士に当たるとは思わないことだ。

A社長 弁護士にも〝当たり・外れ〟があるということはわかりましたが、道のりは遠いですね。

B会長 それではヒントを1つ。きちんとコミュニケーションをとれる相手かどうかが重要だね。前回助言した通り、弁護士は、法律の話に終始せず、依頼者が置かれた状況をきちんと理解し、トラブルの個性や特殊性を具体的に把握しなければならない。その上で今後どのような手を打ち、解決に向けた舵取りをするのが適切かを依頼者にきちんと説明しなければならない。人間関係の原点のような部分が重要なんだ。
頭の中で考えてばかりいないで、何かきっかけを見つけて、まずは会ってみることだと思うよ。

前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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