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第4話 本当に親族を後見人にする?決めるのは自分自身

月刊「財界さっぽろ」2019年06月取材

生活に潜むリーガルハザード

変わる「成年後見人制度」 国は親族を後見人に推奨

認知症などで判断能力が十分でない高齢者が増えています。このような成年者を裁判所が関与して保護者を選任し、支える制度が「成年後見人制度」です。
19年3月18日、後見人には「身近な親族を選任することが望ましい」との考えを最高裁判所が示し、全国の家庭裁判所に通知しました。

後見開始の審判と成年後見人を選任する家庭裁判所は、親族らの不正(02年には財産の着服横領が50億円を突破)を防ぐ観点から、弁護士や司法書士等の専門職から後見人を選任してきました。
しかし、500万人以上の認知症の高齢者に対し、成年後見の利用は22万人弱。他人が後見人になることへの親族の反発や財産管理の報酬が高いとの不満もあります。

専門職の不祥事もあり、預貯金を着服した司法書士や元・弁護士もいます。棄却されたものの、後者の被害者の二人からは、成年後見人に選任した家裁にも責任があると国にも損害賠償を求められ、裁判所が非難を浴びる事態となったのです。そこで「身近な親族を選任することが望ましい」と言い切り、裁判所が責任を問われる可能性を低くしたのかもしれません。

 

「専門職」or「親族」 選定は〝自己責任〟

このように考えれば、制度利用が増えるのかは疑問です。国は22年までに全国の市町村で親族の後見人の支援を担い、不正を防止するための機関の整備を計画していますが、現時点での進捗状況は十分ではないようです。
社会において、維持発展に必要な仕事を多数の構成メンバーが分担し、専門的なことは専門家が遂行し、時にそれをわかりやすく説明することが社会のあるべき姿でしょう。複雑な制度を専門外の個人が動かせば、問題が発生したり、保護されるべき人が制度の恩恵を受けられない事態にもなりかねません。後見人の選定を含めてすべてが〝自己責任〟なのです。

「令和」が始まり、新時代への期待が高まっていますが、スローガンだけでは何も変わりません。自分自身のことについては、きちんと考え、行動しないと良い結果には結び付きません。〝自己責任〟が自分自身の行動規範であることを意識しなければならない時代であり、こうした潮流は今後も加速していくでしょう。
制度の利用については、自分の立場を後見される側・する側で考え方は大きく異なります。できないことは誰に何をやってもらうかを考えて行動してください。世の中が全て面倒を見てくれることはあり得ません。まずは意識的に個別の問題に直面するごとに、足りない部分を補充してくれる人を選び、実践していくほかありません。

 

前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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