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第19話 整理解雇はお手軽じゃない!まずは理解を深めよ

月刊「財界さっぽろ」2020年09月取材

生活に潜むリーガルハザード

業績悪化でよぎる「社員を減らす」選択

コロナ禍収束の気配もなく、直面する事態への対処と将来を見据えた対応の調整が難しい局面といえるでしょう。このような場面では、つい〝特効薬〟を求め、失敗することも多いのが実際です。

景気悪化の長期化が濃厚な中、これからは「人余り」そして「人減らし」を前提とする経営方針の転換が大きな流れとなるでしょう。直ちに人減らしのための「整理解雇」に飛びつきたいと思う経営者もいらっしゃるかもしれません。

裁判では、整理解雇における解雇の有効性は

①人員整理をおこなう必要性(人員削減の必要性)
②できる限り解雇を回避するための措置が尽くされているか(解雇回避努力)
③解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であるか(人選の合理性)
④労働組合との協議や労働者への説明がおこなわれているか(手続の妥当性)

という4つの要素を総合的に判断されています(整理解雇法理)。

その解雇は無効?整理解雇法理の真実

苦境に陥った経営者は、経営上の理由での余剰人員の削減なのだから、ハードルは低くなるだろうと思い込み、整理解雇法理の要素をつい都合よく捉えがちです。

しかし、整理解雇は使用者側の事情を理由とし、相当数の労働者を対象として解雇する場合です。個別の労働者についての能力不足や勤務不良といった事情を直接的理由とするものではないため、一般の解雇と比べてより厳しい制約があり、慎重に検討すべきです。

裁判では経営者が考えるより厳格に判断され、解雇が無効とされた事例が多いのです。

整理解雇は〝特効薬〟といった代物ではありません。労働者によって裁判所に持ち込まれた場合、裁判所が経営者に対してその解雇が無効であることを説明するためのチェックリストともいえます。

例えば、経営の合理化や競争力強化に不可欠でも、それだけでは「人員削減の必要性」は認められません。また、「人選の合理性」についても責任感・協調性の欠如といった抽象的な理由は認められません。また、具体的な理由があっても、あらかじめ会社の都合で具体的に辞めてほしい人と残ってほしい人を特定した上、選定とすることは論外となるでしょう。

ただ、整理解雇の事案が全て裁判所に持ち込まれるわけではありません。また、持ち込まれた事件が全て判決によって終結するわけでないことも考えると、整理解雇法理の考え方を理解し、実情に合わせて機能的に活用することは十二分に有為なことです。

「労務問題」に王道や〝特効薬〟はありません。まずは「解雇権濫用法理」や「退職勧奨」などの定番の考え方や手法を十分理解した上で、個別具体的に慎重な判断をしていくことが重要です。

前田尚一法律事務所:フリーダイヤル 0120・48・1744

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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