フレデリック・W・テイラーをご存じでしょうか。
テイラーは、製造業における肉体労働の生産性を50倍に向上させる「科学的管理法」を完成させ、先進国経済を生み出したと紹介されている技師・エンジニアで経営学者です。「マネジメントの父」と呼ばれ、「顧客創造」という言葉で有名な経営思想家ピーター・F・ドラッカーの著書の中にしばしば登場する人物です。
テイラーの手法は、初めに仕事を個々の動作に細分化し、その動作に要する時間を記録します。無駄な動作を探し、不可欠な動作を短い時間で簡単に行えるように、それらの動作を組み立て直すのです。そして、最後の仕上げに、各動作に必要な最適の道具を作り直す……。
それが、一体、弁護士の業務、活動とどのような関係があるのか。
このテイラーの手法が全米に広まったのは、アメリカ東部の鉄道会社が、貨物輸送運賃の値上げを要求した事件がきっかけとするものでした。
荷主側の弁護士ルイス・ブランデーズ氏が、テイラー管理法を紹介し、鉄道会社の非効率な運営を指摘して、運賃の値上げ要求を撤回させたのです。
単に法律論を展開するのではなく、経営管理の実態にまで踏み込んだ論戦によって依頼者の利益を確保したのです。
このようなことは、極めて稀なことかもしれません(もっとも、当方の提案内容が、相手方にとってもメリット、ベネフィットがあることを提示することは、常に、解決のために有力な手法です。そして、弁護士には、これを相手方に伝達できるスキルが必要です。)。
しかし、顧問弁護士という立場は、法律論ばかりではなく、顧問先企業との間で、深い関係を構築しながら、法律紛争の解決、予防において顧問先企業の置かれた立場を客観的に観察し、企業独自固有の志向に合わせて個別具体的なサービスを提供させていく必要があります。






