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第13回「切り餅裁判」から考える知的財産権

月刊「財界さっぽろ」2012年05月取材

会社を守る法律講座

――業界2位の越後製菓が、特許侵害で、業界1位の佐藤食品工業(佐藤食品)を訴え、サトウの切り餅が製造中止になりました。

前田 特許対象は最先端技術ばかりではありません。越後製菓が切り餅の側面に切れ込みを入れ、先に特許を取得。その後、佐藤食品は側面に加え、上下面にも切り込みを入れる特許を取得しました。第1審では特許侵害に当たらないとしていましたが、3月2日の控訴審は佐藤食品に製造禁止、約8億円の賠償、製造装置の破棄を命じた逆転判決を下しました。

――判決がコロコロ変わるのでは、企業はリスクを抱えたまま経済活動をしなければなりません。

前田 「切り餅裁判」の判決前日には、日立IC複写技術訴訟の控訴審があり、1審では約6300万円の支払いだったものが約290万円に大幅減額されました。有名な「青色LED特許訴訟」でも、1審は、発明者である従業員の「相当の対価」を約600億円、請求の範囲で200億円を認めました。ところが控訴審は相当の対価を約6億円とし、最終的には遅延損害金を含む約8億4000万円で和解です。『発明などの知的財産の創出のため、創出者のインセンティブを保障する一方、産業や文化の発展を図るため、利用の便宜も図る』とは言っても、経済活動の実態を把握し、どのように法律の世界に取り込むかという判断は、担当する裁判長の基本的姿勢で大きく変わります。佐藤食品の場合、控訴審判決後、株価が急落するなどの事態も起きています。予見できない裁判結果が経営に与える影響は、多岐に及ぶのです。

――大手企業ばかりですね。

前田 それは違います。特許権等の技術的な知的財産権は、東京地裁と大阪地裁だけが第1審管轄を有し(専属管轄)、東京高裁の特別の支部である知財高裁が控訴審とされているため誤解が多いのです。知的財産権は、特許権のほか実用新案、育成者権、意匠権、著作権、商標権など広範なもの。地方の中小企業の間でも、経済活動の中で、始終紛争の火種となっています。道内では、商標権侵害および不正競争防止法を根拠に、商品の販売禁止および破棄を求め、札幌地裁に提起された「面白い恋人」訴訟はご存じでしょう。当事務所でも「芯なしトイレットペーパー」の特許権、「熊出没注意」の商標権を巡る紛争を扱いました。

――注意すべき点は。

前田 知的財産権の分野は、紛争が発生した場合、結果を予測するのが困難です。経営的視点から、どのような落としどころにするか考えていかなければならず、専門家の協力が必要です。当事務所では、この種の案件を取り扱ってますので、ぜひご相談ください。(0120・48・1744)。

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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