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第37回 〝問題社員〟の対応にはご用心!

月刊「財界さっぽろ」2014年8月取材

会社を守る法律講座

前田 今回は、労使問題を抱える経営者A氏にその対応策をレクチャーしました。以下談話です。

A氏 従業員の賃金アップを考えています。

前田 それは結構なことですが、その後賃金の減額は原則従業員の合意が必要ですから、難しいですよ。もし、現在抱えている労務問題の解決策として考えているのであれば、抜本的な解決にはなりません。

A氏 問題がこじれたら、給与の1カ月分を支払って解雇します。

前田 それは解雇できる場合であっても、原則として1カ月分を支払わなければならない、という決まりです。解雇することはそう簡単ではありません。
「著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込みがないという場合に限る」などとして、解雇を無効とした裁判例は珍しくありません。中には、業務命令違反の労働者に対する4回のけん責(戒告)後でも、解雇を無効とした例もあります。ところで、日常の労務管理は大丈夫ですか。

A氏 残業問題はきちんと対策を講じていますよ。

前田 経営者は「基本給に含めて金額を決めていた」「管理職手当・精勤手当に含んでいる」「休憩していて仕事をしていない時間が多い」などと反論しますが、これらの弁解は意味をなしません。
仮眠時間や空き時間も労働時間に含まれるとした例、労働者自身が作成した超勤時間整理簿をもとに残業時間を認定した例もあります。
つまり、労働法や裁判所の判断は、労働者に有利となっています。最近では、男性の育休取得に関するパタニティハラスメントの問題(第31回参照)のように、考え方や価値観の違いによる争いも増えていますし、労働組合が結成されるケースもあります。

A氏 当社は従業員数も少ないですし、組合とは無縁です。

前田 一人でも加入できる「合同労組」や「ユニオン」といった組織があります。加入した元従業員とともに「団体交渉に社長を出席させろ」「決算書を出せ」などと要求され、対応せざるを得なくなった例もあります。初動対応が重要です。

これらの対処は、まず案件の個別具体的な事情を分析し、問題の核心を把握します。その上で緻密な対応策を練ることが必要です。うつ病・メンタルヘルス問題(健康管理、休職、職場復帰)やセクハラ・パワハラ問題も同様です。

先日、北海道労働委員会で不当労働行為と認定された事案を、中央労働委員会(労働委員会の最高裁判所的な機関)に持ち込み、意に適った和解を成立させました。労働法・裁判の実際を理解し、異なる切り口でアプローチすれば、解決可能な案件もあるのです。

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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