月刊「財界さっぽろ」2019年08月取材
生活に潜むリーガルハザード
かなり身近にある情報統制 存在自体が隠されている
「老後2000万円」騒動の報道ブームは過ぎたようです。重大事件の情報であっても、次から次に押し寄せる新しい出来事の中に埋没し、忘れられ、うやむやに終息するのが多くの場合です。しかし、いったんは即、具体性、信憑性等に踏み込む間もなく、大爆発して〝大騒ぎ〟が起こります。
騒がれる側としては、騒動が終息するまでの面倒から逃れるために〝騒ぎ〟が起きない方法をとろうとするのが常道です。情報の統制、さらには情報の抱え込み、受け手側の情報からの隔離です。
そこで今回は10年以上前のオフに、女房と上京した帰りに搭乗予定であった札幌(千歳)行き航空便が欠航した際の羽田空港での体験をお話します。
表層を見て大騒ぎ 〝気づかない〟現実
女房がターミナルのショッピング街を見るというので、私だけ先にセキュリティゲートで手荷物検査を済ませ、ゲートエリア内に入りました。すると、雪のため札幌行きの前便が到着しておらず、乗客で溢れていました。私が乗る便は、天候調査中とのことでした。
しばらくしてゲートの外にいる女房から携帯に電話がきました。ゲートを通して貰えないと言います。担当者に尋ねても理由はわからず、そのような指示があったという一辺倒だとのこと。
その後、女房から欠航が決まったという場内アナウンスが入ったという連絡がきました。しかし、ゲートエリア内では依然「調査中」の表示のままなのです。
ゲートエリアの内と外で乗客に与える情報が異なっています。ピンときました。エリア内の乗客に情報を早く与えすぎると、混乱が生じるという考えに違いありません。まずは外の乗客を落ち着かせ、タイミングを見て内の乗客に決定済みの情報を開示するという企てでしょう。担当者に外では欠航というアナウンスがされているが、違うのかと尋ねてみましたが、センターからそのような説明は受けていないとの回答でした。まさに、組織的な情報統制です。
要するに担当者にも事実を伝えていないのです。憶測ですが、担当者にも情報を開示せず、手足のように使う仕組みが出来ているのかもしれません。「敵をだますなら、まず味方から」の実用です。
日常的な場面でも統制される側は気づかないまま、こうしたシステマチックな情報統制が大々的かつ多様な場面でおこなわれているでしょう。事態の表層を見て怒り、大騒ぎをし、情報統制されていたことにも気づかないまま、そのものを忘れてしまう。情報統制されている本人は、情報統制されていることに気づかないのです。