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第3回安易な解雇は、会社を壊滅させる!

月刊「財界さっぽろ」2011年07月取材

会社を守る法律講座

――不況は深刻になる一方で、能力不足や勤務態度の不良の従業員を解雇したいと考える経営者は多くいます。

前田 従業員を解雇することは、経営者が考えるほど簡単ではありません。「病気で元の業務を遂行できなくとも配置可能な業務を検討すべきである」とか、「平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込みがないという場合でなければならない」などとして解雇を無効とした裁判例は珍しくなく、能力不足や勤務態度の不良という理由で従業員を解雇する場合のハードルは、極めて高いものです。業務命令違反の労働者に対する4回のけん責(戒告)後の解雇を無効とした裁判例もあります。

――整理解雇の場合ということになれば、ハードルは低くなるのでは。

前田 抽象的にはそう言えそうですが(1)人員削減の必要性、(2)解雇回避の努力、(3)被解雇者選定基準の妥当性、(4)労使交渉等の手続きの合理性が要素とされ、実際の裁判例では、経営者が考えるより厳格に判断されるため、解雇が無効とされた事例が少なくありません。

――身近な具体例はありませんか。

前田 札幌地方裁判所の事件ですが、出張旅費の着服で懲戒解雇された従業員からの退職金の支払い請求に対し、約540万円の支払と認めた裁判例もあります。経営者の立場で考えると、裁判所の判断は複雑怪奇というほかないかもしれませんが、現実は現実として受け止めなければなりません。

――ほかに留意しておくことはありませんか。

前田 契約社員の雇い止めが無効とされた事例、解雇せずに退職勧奨したのに退職強要として不法行為にあたるとされた事例などがあり、留意すべきことは山のようにあります。また、解雇を通知したことを契機に労働組合が結成されることもあります。円満に協議していく内容の書面であると思って署名捺印したら、何事も組合の同意がなければ決められなくなってしまったとか、「団体交渉に社長を出席させろ」「決算書を提出しろ」と要求され応じざるを得なくなった事例もしばしばみられます。経営者としては、これまで体験したことのない団体交渉に出席して対応するだけでも大変なことでしょう。こういった問題に加え、証拠の確保という観点からの心構えもありますので、壊滅的な事態にならないよう専門家の意見を聴きながら一緒に事を進める必要があります。使用者側の労働問題については、無料で相談を受けていますので、ぜひご利用下さい。

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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