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第41回 残業代対策の極意。「定額」「みなし」の落とし穴

月刊「財界さっぽろ」2014年12月取材

会社を守る法律講座

前田 今回は、はやりの残業代問題について、経営者A氏の相談内容を紹介します。以下談話です。

A氏 当社は残業問題が悩みだったんですが、専門のコンサルタントに勧められ定額残業代制度を導入しました。

前田 定額残業代(固定残業手当)制度は、日本マクドナルド事件など「名ばかり管理職」の問題が脚光を浴びてから利用することが多くなった仕組みのようです。しかし、法律で定められた計算による割増賃金額を下回らない限りで適法と認められるだけです。

道内ではホテルの事例があります(札幌高裁2012年10月19日判決。「ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件」)。裁判所は同制度の有効性は認めましたが、支給している手当は95時間分の時間外賃金であるとする会社の主張をしりぞけ、支給額は月45時間分の残業の対価であり、それを超えた残業及び深夜残業に対しては、法律に従った時間外賃金の支払いを命じました。

詳細は割愛しますが、裁判所は「本来法的に許されない無制限な定額時間外賃金に関する合意を従業員としていた」などと経営者側の非難すべき面を認定しています。

A氏 当社では外回りの営業が多いので、コンサルタントに「事業場外労働のみなし制」の導入を勧められています。歩合給も支払っていますし、これで万全です。

前田 外勤などの労働時間の算定が難しい場合には、通常必要とされる時間を「みなし時間」としてあらかじめ設定しておく仕組みです。この制度を導入すれば残業代が一切発生しないと考えているのでしょうが、それは大きな間違いです。

例えば、最高裁判所は旅行会社の主催する募集型企画旅行の添乗業務であっても、この制度を適用できないとしています(14年1月24日判決。「阪急トラベルサポート残業代等請求事件」)。
労働法は労働者に有利にできています。経営者としては納得できないことであっても、この点を押さえておかないと労務管理の重要性を無視するブラック企業と評価されかねません。

そして、法律上の制度の意味をきちんと理解し、自社の実情を具体的に分析した上で制度を採用しなければなりません。ちなみに推測ですが、そのコンサルタントからタイムカード制を導入すれば問題が解決できると勧められていませんか。

A氏 その通りです。

前田 専門と称して怪しいコンサルタントが暗躍していますので、注意が必要です。どうやらA社長の会社は労務管理関係全体を洗い直す必要がありそうですね。
当事務所では、経営者・管理者のために労務トラブルについて、年内は無料相談を実施しています。少しでも不安がよぎったら遠慮なくお電話ください(0120・48・1744)。

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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