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第61回 人手不足と労務問題は表裏一体。早期発見・治療が重要

月刊「財界さっぽろ」2017年10月取材

会社を守る法律講座

顧問先社長との談話です。

A社長 9月2日に放送されたUHBの「おじゃまします!」を見ましたよ。

前田 この連載の「経営者の常識は危険!」(第60回)で述べた労使問題を抜粋して解説しました。

A社長 最近、長時間労働や残業手当の未払い、パワハラといった労使問題が大きく取り沙汰されていますね。

前田「人手不足」が深刻化する中、「ブラック企業」との汚名を着せられると取り返しがつきません。政府は今年3月に「働き方改革」をまとめ、10年後をゴールとして①同一労働同一賃金の実現②長時間労働の是正といった改革を進めています。既に法制化され、対応を余儀なくされている「無期転換ルール」もあり、経費だけが増加していきます。労働者を〝たきつける〟弁護士のHPも急増しており、社員の権利意識の高まりに拍車をかけそうですね。

A社長 きちんと労務管理や労務対策、就業規則の整備なども考えていかなければなりませんね。

前田 従来の経営手法や社会常識で物事を解決できる、誰が見ても自分の考え方が常識的で正しい、さらに、結論が出ているのに長々と話し合うのは無駄である、と思い込むことをやめましょう。そもそも、常識は立場により異なりますし、労働法は労働者に有利です。実際の判例も同様だという現実を受け入れなければなりません。

経営者は安易な解決手段に飛びつき、事を拗らせてしまうことも多い。日本マクドナルドの「名ばかり管理職」事件が著名ですが、これを契機に採用が増えた「固定残業代(定額残業代)制度」についても「ザ・ウィンザー・ホテルインターナショナル事件」等失敗例が多い。また、外回りが多いと「事業外労働のみなし制」を活用したくなりますが、募集型企画旅行の添乗業務であっても、この制度を適用できないという最高裁判決(「阪急トラベルサポート残業代等請求事件」)があります。

1週40時間、1日8時間という縛りを業務の繁閑や特殊性に応じて労働時間を配分できる「変形労働時間制」もあります。シフト制を活用する場合などに有用な制度ですが、法律上の条件があり、それを理解して採用しなければ、法的効果が認められないこともある。

A社長 先生には債権回収や不動産、新規事業などでお世話になっていましたが、今後は注意深く労務問題にも取り組んでいきます。

前田 変容する大きな流れの中で、就業規則の制定・見直しはもちろんですが、長い目で法律制度の動きと企業内での社員の動きにアンテナを張る必要があります。何か不安めいたことがあったら、早い時期から案件の具体的な状況を分析し、問題の核心を把握すべきです。個々の問題の詳しい内容は、次回以降にお話ししましょう。

 

 

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サンプル⇒「働き方改革関連法」中小企業の時間外労働の上限規制導入は?

前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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