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AIが“下ごしらえ”を終わらせる時代、人間に残る仕事とは何か

AIによって、法律実務の調査・整理・要約は急速に高速化しています。
しかし、その一方で、人間にしかできない「最後の判断工程」の重みは、むしろ増しています。
これは、料理の世界に少し似ているのかもしれません。

“最後の味付け”は、料理本にもAIにも書いていない

昔、料理を作るとすれば、

材料を買いに行き、
洗い、切り、擦り、すり潰し、
煮る、焼く、蒸すなどをしながら、
味を整え、最後に盛り付ける。

そうした、性格の異なる複数の工程を、順番に、時には並行しながら進めていました。

ところが今は違います。

かなりの部分が、既に加工済の状態で目の前に置かれる。

材料収集も、下処理も、ある程度の加熱も終わっている。

AI時代の法律実務は、これに少し似ています。

以前であれば、

・条文確認
・判例探索
・文献収集
・論点整理
・比較検討
・要約作成

といった“下ごしらえ”に、大量の時間がかかっていました。

しかし現在は、AIによって、

「かなり食べられる状態」

まで、一気に出力されるようになり始めています。

すると、人間側には、いきなり、

「最後の味付け」

が求められる。

しかも、その部分こそ、本来もっとも難しい。

料理でいえば、

・塩加減
・火を止めるタイミング
・誰に食べさせるか
・今日は薄味にするのか
・素材をどこまで活かすか

といった部分です。

ここは、料理本だけでは身につきません。

経験、感覚、空気、相手理解――
そうしたものが強く影響します。

法律実務も似ています。

AIは、

・判例
・条文
・一般論
・典型論点
・要約

を高速で整理できます。

しかし、

・相手企業の本当の狙い
・業界の空気
・裁判所の温度感
・経営上どこが地雷か
・どこで引くべきか
・どの選択肢を将来に残すべきか

までは、自動で決まりません。

むしろ今後は、

「情報をたくさん持っている人」

より、

「最後にどこで味を決めるか分かる人」

の価値が高まるのかもしれません。

しかも、厄介なのは、
AIが出してくるものが、かなり“もっともらしい”ことです。

だから、多くの人は、

「もう完成している」

ように感じてしまう。

しかし実際には、

・温度が違う
・相手に合っていない
・後味が悪い
・長期的には崩れる

ということが起きます。

料理でも、

“濃い味の加工食品”

に慣れると、

素材を活かした料理を、
「物足りない」と感じることがあります。

法律実務でも同じです。

・論点過多
・過剰引用
・長大な文章
・AI的網羅性

の方が、“仕事をした感じ”を出しやすい。

しかし、本当に難しいのは、

「余計な手を加えない」

ことだったりします。

実際、強い実務ほど、

・論点を増やしすぎない
・不要な争点化をしない
・無理に感情を煽らない
・勝てる部分だけを静かに残す

という方向へ向かうことがあります。

これは、
素材を最大限活かす料理に少し似ています。

そして、そうした技術ほど、
説明しにくい。

だからこそ、
AI時代には逆に、

“身体化された経験”

の価値が上がるのかもしれません。

テレビを見ながら、
チンタラ料理している暇は、もうありません。

下ごしらえは、AIが一気に終わらせてしまう。

だからこそ、
最後に何を残し、
どこで味を決めるか。

そこに、人間の仕事が濃縮されていくように思います。

 

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――弁護士として、人生の修羅場に立ち会ってきて思うこと』

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前田 尚一(まえだ しょういち)
弁護士として30年以上の経験と実績を有し、これまでに多様な訴訟に携わってまいりました。顧問弁護士としては、常時30社を超える企業のサポートを直接担当しております。
依頼者一人ひとりの本当の「勝ち」を見極めることにこだわり、長年の経験と実践に基づく独自の強みを最大限に活かせる、少数精鋭の体制づくりに注力しています。特に、表面に見えない企業間の力学や交渉の心理的駆け引きといった実務経験は豊富です。 北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校、北海道大学法学部卒業。

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