北海道の地方都市では今、長年地域を支えてきた葬儀社、仕出し店、宴会場、和食店などが静かに姿を消し始めています。
そこには、単なる景気悪化では整理できない、人口動態・需要変化・資金繰り・地域構造の問題が重なっています。
“地域の集まり”を支えていた店が消えていく時代
地方では今、
長年地域を支えてきた事業者が、静かに姿を消し始めています。
例えば函館では、1897年(明治30年)創業の老舗葬儀会社、株式会社博善社が、2026年に破産手続開始決定を受けました。
120年以上にわたり地域の葬儀・法要を支え、
複数の斎場を展開していた企業です。
しかし、
コロナ禍による大人数葬儀の減少、
その後も続く家族葬・直葬への移行によって、
従来型葬儀の収益構造が大きく変化しました。
また、最近では、
仕出し料理や法要膳などを手がけていた、岩見沢市の株式会社うしじま(2008年5月設立)が、
2026年5月に事業を停止しました。
同社は、
法要膳、
オードブル、
仕出し弁当だけでなく、
家族葬向け貸館、
和食居酒屋、
アイス販売など、
地域需要を支える複数業態を展開していました。
しかし、
コロナ禍以降の宴会・法要需要の減少に加え、
食材費、
配送コスト、
運営負荷の上昇が重なり、
資金繰りが限界に達したと報じられています。
さらに網走市では、
地域住民に長年親しまれてきた宴席料理店「花レン」が、
コロナ禍初期に経営破綻しました。
「親の代から子の代まで、
祝い事や集まりといえばここだった」
と言われた地域の拠点でしたが、
宴会・法要需要の急減に耐えきれませんでした。
また函館市の和風料理店「旬暦 ひだか」も、
2026年に閉店しています。
法事、
親族の集まり、
祝いの席などを支えてきた店ですが、
大人数宴席を前提とした和食業態そのものが、
地方都市では維持しにくくなり始めています。
もちろん、
個別事情はそれぞれ異なります。
しかし共通して見えてくるのは、
・人口減少
・法要や宴会の小規模化
・コロナ後の需要構造変化
・人手不足
・仕入価格高騰
・配送コスト上昇
・価格転嫁困難
といった、
複数の構造要因です。
特に地方では、
「倒産」よりも、
静かな自主廃業の方が遥かに多い。
帝国データバンク等の調査でも、
近年は葬儀社や仕出し業の休廃業・解散件数が高水準で推移しています。
実際には、
「まだ資産が残っているうちに閉じる」
という判断が増えています。
後継者問題、
将来需要、
設備更新負担、
経営者自身の年齢や体力――。
様々な現実条件を前に、
事業継続を断念するケースが少なくありません。
そして、
地域サービス業の変化は、
単なる「店が減る」という話では終わりません。
法要、
宴席、
地域の集まり、
親族の接点――。
これまで、
地域コミュニティを支えていた「場」そのものが、
維持されにくくなり始めています。
人は今後も、
集まり、
食事をし、
弔い、
関係を持ち続けます。
しかし、
その“成立条件”は、
大きく変わり始めています。
実際の社会では、
理想論より先に、
「資金繰り」
「運営負荷」
「維持可能性」
という形で、
構造変化が現れます。
法律問題でも経営問題でも、
現実には、
「何が正しいか」
だけではなく、
「何を維持できるのか」
「どこまで負担を引き受けられるのか」
という問題から離れることはできません。
地方の老舗が静かに消えていく現象は、
単なる一企業の問題ではなく、
社会の成立条件そのものが変わり始めていることを示しているのかもしれません。
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