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第26話「犯人の『その後』を追え!」

「犯人の『その後』を追え!」

危険運転、あおり運転や恫喝場面、車両・商品・生産物の盗難場面の動画が、
日々取り上げられ、手っ取り早くモノを調達できるのか、キー局ばかりか道
内地方局でも、番組内に挟み込んでいます。

しかし、この種の、一見報道のごとくされる動画放映は、世相を見ると、か
えって同種行為を煽ることになるのでは、という懸念があります。

テレビ局には、きちんと「後」追いし、報道としての「後」始末までして欲しい、そう思われませんか?!

下掲は、かつて雑誌の連載に投稿した記事です。
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月刊「財界さっぽろ」2021年05月取材

生活に潜むリーガルハザード

事件のその後は?  後追い報道は皆無

前回のコラム(「専門家は減る一方。求めるのは知見?手軽さ?」)でお話した通り、テレビでは朝から事件現場の投稿動画をもとに、さまざまな衝撃映像を放送しています。ドライブレコーダーで録画された危険運転や暴力・脅迫行為などが撮影されていることも少なくありません。

こうした映像に登場する人物の顔や車のナンバーには、ぼかしが入っていることがほとんどです。マスコミあるいは撮影者が、その後適切な対応をしていれば、警察も比較的容易に犯人にたどりつけるはずですが、大半は撮影しているだけ、放送しているだけではないでしょうか。

また、その犯人が社会的制裁を受けることになったのかどうか、どのような刑罰や処分となったかといった顛末の報道は、ほぼないというのが実情です。

凶悪・重大犯罪であればそれなりの後追い報道がありますが、次から次に目新しいニュースが報道され、大きな出来事も早々に忘れてしまうのが現代人の日常です。投稿に基づいて日々放映される映像については、その場の衝撃度が何よりの売りであり、その場限りの〝使い捨て動画〟ともいえるでしょう。

 

犯罪抑止につながる報道を願うばかり

ところで、刑罰の目的や機能を深掘りすると、いわゆる〝目には目を、歯には歯を〟という考え方(同害報復・タリオ)が合理化された「応報」のほかに、「予防」の観点があります。

犯罪者が再犯しないように刑罰を与えることを「特別予防」といい、刑務所などではさまざまな再犯防止プログラムを受刑者や入所者に受けさせています。

一方、前科も何もない一般人の犯罪を抑止するのが「一般予防」といわれています。一般予防は、あらかじめ各種犯罪に対する刑罰が定められた法律が整備されていることに加え、犯罪を犯してしまった場合に、どのような刑罰が受けなければならないかをしっかりと周知していくことが決め手になるでしょう。

しかし、その場限りの衝撃映像の放映を繰り返すだけでは、少なくとも「一般予防」は難しいのではないでしょうか。つまり、犯罪抑止という役割を果たす報道ではないということです。

凶悪・重大犯罪さえなくなれば暮らしやすい社会になるというわけではありません。軽微な犯罪も当然のこと、モラルハザードといったレベルの迷惑行為も、それが恒常的・日常的に繰り返される社会ならば、常にストレスが蔓延し続ける不快な世界と言わざるを得ません。また、社会的制裁や刑罰を意識することなく、衝撃映像に触発されて類似の犯行に及ぶ模倣犯・愉快犯の増加も危惧すべきです。報道が一般予防につながることを切に願っています。

前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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