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「人類はいつから人類なのか」―― 境界は、後から整理される

「人類の歴史は約700万年前から始まる」と説明されることがあります。
しかし実際には、「ここからが人類」と一本線で区切れるわけではありません。
後から見返し、整理され、名前が与えられている。
この構造は、歴史だけでなく、法律問題や経営判断にも似ています。

現実が先にあり、分類は後から与えられる

「人類の歴史は約700万年前から始まる」

教科書などでは、そのように説明されることがあります。

現在では、その頃の古人類として、
サヘラントロプス・チャデンシスが挙げられることが多いようです。

私の学生のころは、アウストラロピテクス(約440万年前)が挙げられていました。

もっとも、
「ここからが完全に人類である」
と一本線で区切れるわけではありません。

チンパンジー系統との分岐直後の近縁種とみる考え方もあり、
新しい化石や研究によって、
整理のされ方も変わり続けています。

つまり、
「700万年前から人類史が始まる」
というのは、
最初から明確に境界が存在していたというより、

後から振り返り、
「この辺りから人類系統として考えられる」
と整理されている面があります。

現実が先にあり、
分類は後から与えられる。

これは、歴史だけの話ではないように思います。

法律問題でも、
最初から「争点」が整理されているわけではありません。

相続、
経営、
企業紛争、
労務問題などでも、

感情、
関係性、
経緯、
証拠、
損失配分、
将来リスクなどが複雑に絡み合い、
当初は「何が問題なのか」自体が曖昧なことがあります。

その後、
事実を積み重ね、
整理を進める中で、
初めて、

「本当の争点はどこにあったのか」
「何を守ろうとしていたのか」
「どこで判断が分かれたのか」

が見えてきます。

たとえば相続でも、表面上は「遺産分割」の争いに見えても、実際には長年の感情の蓄積が中心になっていることがあります。

また、最初は“誰が悪いか”の問題に見えていた
しかし整理すると、“期待のズレ”や“役割分担の曖昧さ”が本質だった、
と言う場合も。

歴史も、
最初から名前が付いていたわけではありません。

後から、
区分され、
整理され、
意味づけられている。

人は、複雑な現実を扱うために、後から境界を作り、名前を与え、判断可能な形へ整理していくのかもしれません。

そして、その整理自体も、
時代とともに変わり続けています。

現実は、
教科書のように最初から綺麗に線引きされているわけではない。

むしろ、
境界が曖昧なまま動いていくものなのだと思います。

それでも社会制度は、どこかで線を引かなければ動かない。
法律とは、その曖昧な現実に、暫定的に境界を与え続ける営みなのかもしれません。

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
弁護士として30年以上の経験と実績を有し、これまでに多様な訴訟に携わってまいりました。顧問弁護士としては、常時30社を超える企業のサポートを直接担当しております。
依頼者一人ひとりの本当の「勝ち」を見極めることにこだわり、長年の経験と実践に基づく独自の強みを最大限に活かせる、少数精鋭の体制づくりに注力しています。特に、表面に見えない企業間の力学や交渉の心理的駆け引きといった実務経験は豊富です。 北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校、北海道大学法学部卒業。

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