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株主総会で経営権を失いそうになったら|議決権・役員人事・総会前後の対応を整理する|最初の判断【会社支配権篇】

 

株主総会で取締役の解任や新たな役員の選任が予定され、経営権を失うおそれがある場合、総会当日の議論だけで結果を変えることは容易ではありません。まず、誰が議決権を持ち、どの議案が、どの手続で決議されようとしているのかを確認する必要があります。

株主総会で経営権を失いそうになったら

株主総会の招集通知が届いた。

議案を見ると、自分の取締役解任や、新たな取締役の選任が予定されている。

ほかの株主が結束し、自分を会社経営から外そうとしているらしい。

このような場面では、「株主総会で反論すればよい」「総会当日に事情を説明すれば分かってもらえる」と考えたくなるかもしれません。

しかし、会社支配権をめぐる問題では、株主総会が始まる前に、すでに大勢が決まっていることがあります。

まず必要なのは、感情的に反論することではありません。

誰が議決権を持ち、どの議案によって、会社のどの地位が動こうとしているのかを確認することです。


株主総会で何が決められようとしているのか

「経営権を失いそうだ」といっても、その内容は会社によって異なります。

例えば、株主総会の議案として、

  • 現在の取締役の解任
  • 任期満了に伴う取締役の改選
  • 相手方が推薦する取締役の選任
  • 定款変更
  • 役員報酬に関する決議
  • 事業譲渡や組織再編に関する決議

などが予定されている場合があります。

取締役会設置会社では、株主総会で取締役の構成が変わり、その後の取締役会で代表取締役が交代するという流れも考えられます。

そのため、招集通知に「代表取締役の交代」と明記されていなくても、取締役の選任・解任によって、最終的に会社の代表者と経営体制が変わることがあります。

まず、今回の株主総会が終わった後に、誰が取締役となり、誰が会社を代表し、誰が重要な判断を行うことになるのかを確認する必要があります。


最初に確認すべきなのは議決権です

株主総会では、経営に長く携わってきたことや、会社に大きく貢献してきたことだけで結論が決まるわけではありません。

まず問題になるのは議決権です。

確認すべき事項としては、

  • 誰が何株を保有しているのか
  • それぞれの議決権割合はどうなっているのか
  • 株主名簿には誰が記載されているのか
  • 相続や株式譲渡による変動がないか
  • 名義と実際の権利者が異なるという争いがないか
  • 相手方が委任状を集めていないか
  • 決議に必要な賛成数を相手方が確保しているか

といった点があります。

同族会社では、家族や親族の名義で株式が分散していることがあります。

過去の相続や贈与、名義書換が十分に整理されておらず、誰が本当の株主なのか自体が争われることもあります。

「自分が創業者だから」「長年社長を務めてきたから」という事情と、現在の議決権を持っているかどうかは、別の問題です。


定款と会社の機関設計を確認する

次に、定款と登記事項を確認します。

会社が取締役会設置会社なのか、取締役会を置いていない会社なのかによって、役員人事や代表者の決め方は異なります。

また、定款には、

  • 取締役の員数
  • 取締役の任期
  • 株主総会決議の要件
  • 代表取締役の選定方法
  • 株式譲渡制限
  • 株主総会の招集手続

などに関する規定が置かれていることがあります。

株主構成だけを見て結論を出すのではなく、定款、現在の役員構成、任期、会社の機関設計を組み合わせて確認しなければなりません。


招集通知と議案を確認する

株主総会の招集通知が届いた場合は、少なくとも次の事項を確認します。

  • 株主総会の日時と場所
  • 招集通知の発送日
  • 誰が総会を招集したのか
  • 目的事項・議案の内容
  • 取締役候補者の氏名
  • 解任対象者と解任理由
  • 委任状や議決権行使書面の内容
  • 株主総会までに残された期間

招集手続や議案に疑問があっても、それだけで当然に株主総会が無効になるわけではありません。

反対に、手続上の問題を見落として総会を迎えると、事前に取り得た対応を失うことがあります。

招集通知が届いてから株主総会までの期間は限られています。通知を放置せず、早い段階で内容を確認することが重要です。


株主総会当日だけを見てはいけません

会社支配権の問題は、株主総会当日の議場だけで起きるものではありません。

総会前には、

  • 株主間の意向確認
  • 委任状の収集
  • 取締役候補者の選定
  • 株式や議決権をめぐる主張
  • 取引先や金融機関への説明準備

などが進められていることがあります。

総会後には、

  • 代表取締役の交代
  • 役員変更登記
  • 銀行口座や印鑑の管理変更
  • 社内システムへのアクセス制限
  • 従業員や取引先への通知
  • 会社資料や会社財産の引渡し要求

などが短期間に行われる可能性があります。

したがって、株主総会当日の賛否だけでなく、総会の前後に会社の支配状態がどのように変わるのかを予測しておく必要があります。


総会前に整理しておきたい資料

株主総会が近づいている場合、適法な範囲で、次のような資料の所在と内容を確認します。

  • 定款
  • 登記事項証明書
  • 株主名簿
  • 過去の株主総会議事録
  • 過去の取締役会議事録
  • 今回の招集通知と議案
  • 委任状や議決権行使書面
  • 株式の取得、譲渡、相続に関する資料
  • 役員の選任時期と任期が分かる資料
  • 株主間契約や過去の合意書
  • 相手方の動きが分かるメールや文書

ただし、会社資料を無断で持ち出したり、データを削除したり、会社業務を妨害したりすることは避けなければなりません。

必要なのは、相手方との対抗行動を急ぐことではなく、現在の権利関係と事実関係を正確に把握することです。


総会前に法的対応を検討すべき場合もあります

事案によっては、株主総会が終わってから決議を争うだけでは、会社の混乱や事業への影響を避けられないことがあります。

議決権の帰属、招集手続、株式発行、役員の地位などに重大な争いがある場合には、総会前の段階で法的対応を検討すべきこともあります。

もっとも、「経営権を失いたくない」という理由だけで、株主総会や決議を当然に止められるわけではありません。

どのような権利が侵害されようとしているのか、手続上どのような問題があるのか、総会後では回復しにくい損害があるのかを具体的に検討する必要があります。

仮処分などの緊急対応を検討する場合は、時間が結果を左右することがあります。


総会が終わった後でも確認すべきことがあります

株主総会で自分に不利な決議が成立したとしても、それだけで直ちにすべてが確定するとは限りません。

まず、

  • 実際にどのような決議が成立したのか
  • 出席株主と議決権数はどうなっていたのか
  • 委任状はどのように扱われたのか
  • 議長がどのように議事を進行したのか
  • 議事録には何が記載されているのか
  • その後、どのような取締役会決議や登記が行われたのか

を確認します。

株主総会決議の手続や内容に問題がある場合には、決議取消しなどが問題となることがあります。ただし、法的手続には期間制限が設けられているものがあります。

総会が終わったからといって放置せず、早期に決議内容とその後の動きを確認する必要があります。


「経営権を守ること」だけを目的にしない

経営権を失う危険がある場面では、どうしても「相手を退け、自分が残ること」が目的になりがちです。

しかし、会社支配権事件で守るべきものは、現在の肩書だけとは限りません。

  • 会社の事業を継続できるか
  • 従業員や取引先への影響を抑えられるか
  • 株主としての地位をどうするか
  • 会社への貸付金や個人保証をどう整理するか
  • 共同経営を続ける余地があるか
  • 退任条件や株式買取りを交渉すべきか

も検討する必要があります。

法的に争うことができる場面であっても、会社そのものを大きく傷つければ、最終的に得られるものが小さくなることがあります。

何を守り、どこまで争い、どのような状態を出口とするのかを、総会前から考えておく必要があります。


当事務所の考え方

株主総会で経営権を失いそうな場面では、株主総会当日の対応だけを検討しても十分ではありません。

まず、

  • 株主と議決権の構成
  • 定款と会社の機関設計
  • 取締役の任期と役員構成
  • 招集通知と議案
  • 委任状の動き
  • 総会後に予定される代表者交代
  • 会社経営と関係者への影響

を一つの流れとして整理する必要があります。

そのうえで、総会前に動くのか、総会当日に対応するのか、総会後の法的手続を準備するのか、交渉による出口を探るのかを判断します。

当事務所では、目の前の法的正解だけではなく、初動、情報整理、時間、会社内の力関係、事業継続、損失配分まで含めた現実的な判断を重視しています。

 

当事務所では、
目の前の法的正解だけではなく、
初動・情報整理・損失配分・将来維持可能性を含めた現実判断を重視しています。

実際の紛争や経営判断では、初動で何を整理し、何を守り、何を優先するかという判断が、その後の結果を大きく左右します。

そのため、法律的な見通しをご説明するだけでなく、状況や選択肢を整理し、依頼者の方が納得して判断できるよう支援することを大切にしています。

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前田 尚一(まえだ しょういち)
弁護士として35年以上の経験と実績を有し、これまでに多様な訴訟に携わってまいりました。顧問弁護士としては、常時30社を超える企業のサポートを直接担当しております。
依頼者一人ひとりの本当の「勝ち」を見極めることにこだわり、長年の経験と実践に基づく独自の強みを最大限に活かせる、少数精鋭の体制づくりに注力しています。特に、表面に見えない企業間の力学や交渉の心理的駆け引きといった実務経験は豊富です。 北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校、北海道大学法学部卒業。

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