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親族経営の会社で少数株主になったら|家族関係と株主問題を分けて考える|最初の判断【少数株主篇】

 

親族経営の会社では、相続や事業承継をきっかけに、経営に関与しない家族が少数株主になることがあります。

親族間の問題に見えても、株式、経営権、会社財産、相続、将来の承継が重なっています。まず、家族の中での立場と、法律上の株主としての立場を分けて整理することが必要です。

親族経営の会社で少数株主になってしまったら

親族が経営する会社で、いつの間にか少数株主になっていた。

そのようなご相談があります。

例えば、

  • 父親の相続によって会社の株式を取得した
  • 創業時に親から株式を持つように言われた
  • 以前は会社で働いていたが、退職後も株式が残っている
  • 兄弟の一人が会社を継ぎ、ほかの兄弟は少数株主になった
  • 株式は持っているが、会社から何の説明もない
  • 配当もなく、株主総会の通知も届かない

という場合です。

親族経営の会社では、家族関係と会社の関係が重なっています。

そのため、問題が生じても、

家族のことだから大事にしたくない
経営している兄に任せておけばよい
株式を持っていても何もできない
相続で受け取っただけだから仕方がない

と考え、長期間そのままになることがあります。

しかし、時間が経過すると、会社の状況や家族関係が変わり、問題の整理が難しくなることがあります。

「家族の中での立場」と「株主としての立場」は別です

親族経営の会社では、年長者、後継者、本家・分家、兄・弟など、家族内の役割が強く意識されることがあります。

しかし、会社法上の株主としての立場は、家族内の序列だけで決まるものではありません。

経営を任された親族であっても、当然に他の親族の株式を自由に扱えるわけではありません。

反対に、会社で働いていない親族でも、株主であれば、保有する株式に応じた法律上の地位を持っています。

最初に、

  • 家族としてどのような関係にあるのか
  • 会社では誰がどのような地位にあるのか
  • 法律上、誰が何株を持っているのか

を分けて確認する必要があります。

本当に自分が株主なのかを確認します

「自分は株主だと思っている」ということと、会社側も株主として扱っていることが一致しない場合があります。

例えば、

  • 相続したはずなのに株主名簿が書き換えられていない
  • 株券や株式取得に関する資料が見当たらない
  • 親の名義のままになっている
  • 名義だけを借りた株主だと会社から言われた
  • 株式を譲渡したことになっている
  • 遺産分割の際に株式の帰属を明確にしていなかった

という問題です。

したがって、まず確認したいのは、

  • 定款
  • 株主名簿
  • 株券の有無
  • 株式の取得や払込みに関する資料
  • 遺言書や遺産分割協議書
  • 贈与契約書や株式譲渡契約書
  • 過去の株主総会資料
  • 配当や税務申告に関する資料

などです。

株価や売却の話を始める前に、誰が株主であり、何株を保有しているのかを確認する必要があります。

持株数だけでなく、株主構成全体を見ます

自分が何株持っているかだけでは、会社の中での立場は分かりません。

確認するべきなのは、

  • 発行済株式の総数
  • 自分の持株数と持株割合
  • 経営者が保有する株式
  • 他の親族が保有する株式
  • 会社自身が保有する自己株式
  • 親族以外の株主の有無
  • 議決権の内容が異なる株式の有無

などです。

例えば、自分一人では少数株主でも、他の親族株主と合わせると、会社の意思決定に影響することがあります。

反対に、親族全体で多数の株式を持っているように見えても、その中で意見が分かれていれば、一つの株主集団として動けるとは限りません。

親族関係だけで「味方」「相手」と決めず、株主構成と利害関係を客観的に整理する必要があります。

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少数株主には何もできないのか

少数株主は、単独で会社の経営を決定できるとは限りません。

しかし、少数株主だから何の権利もないわけではありません。

保有する株式数や議決権割合などに応じて、

  • 株主総会に出席して議決権を行使する
  • 株主総会関係の資料を確認する
  • 会社から一定の説明を受ける
  • 一定の帳簿や書類の閲覧を求める
  • 株主総会の招集や議案を求める
  • 違法な会社運営について責任を追及する

といった制度が問題になることがあります。

ただし、これらの権利には、それぞれ要件や手続があります。

また、権利を行使すれば、会社や親族との関係が動き始めます。

法律上できることを直ちにすべて行うのではなく、何を知るために、どの権利を、どの時点で使うのかを検討することが重要です。

配当がないことだけで、直ちに不当とは限りません

親族経営の会社では、

会社は利益を上げているのに、配当が一度もない
経営者一族だけが役員報酬を受け取っている
会社のお金が経営者個人のために使われているように見える

という不満が生じることがあります。

しかし、配当を行わないことには、

  • 将来の設備投資
  • 借入金の返済
  • 運転資金の確保
  • 業績悪化への備え

など、経営上の理由がある場合もあります。

一方で、配当をしないまま、支配株主やその家族に高額な役員報酬を支払ったり、会社財産を私的に利用したりしているのであれば、別の検討が必要になることがあります。

配当がないという結果だけを見るのではなく、

  • 会社の利益と資金繰り
  • 役員報酬の額
  • 関係者との取引
  • 内部留保の使途
  • 経営者側が受けている経済的利益

を確認する必要があります。

親族だから、株式を安く譲る必要があるのか

経営を継いだ親族から、

会社に関与していないのだから株式を返してほしい
親族なのだから、この金額で譲ってほしい
父からもらった株式なのだから、本来は後継者へ戻すべきだ

と言われる場合があります。

しかし、親族であることだけを理由に、株式を無償または低額で譲渡しなければならないわけではありません。

他方で、相続時の合意、株式を取得した経緯、事業承継に関する約束などが存在することもあります。

したがって、

  • 株式を取得した経緯
  • 当時の関係者間の合意
  • 会社を誰に承継させる予定だったか
  • 他の相続財産をどのように分けたか
  • 株式を保有し続けることの意味
  • 売却する場合の価格と税務

を整理する必要があります。

会社側から提示された書面に、十分に確認しないまま署名押印することは避けるべきです。

相続が繰り返されると、問題はさらに複雑になります

親族経営会社の株式をそのまま保有している間に、次の相続が発生することがあります。

少数株主が亡くなれば、その株式が配偶者や子どもへ承継され、株主の数が増える可能性があります。

さらに相続が重なると、

  • 誰が何株を相続したのか分からない
  • 株主名簿と実際の権利関係が一致しない
  • 会社と接点のない親族が株主になる
  • 遺産分割が終わらず、株式の扱いが決まらない
  • 会社側も株主を把握できなくなる

という状態になり得ます。

今すぐ紛争がなくても、保有を続ける場合には、自分の次の世代へ株式をどのように引き継ぐのかまで考えておく必要があります。

▶  非上場会社の株式を持っているが、どうしたらよいか分からない方へ

会社へ連絡する前に整理したいこと

親族経営会社の少数株主問題では、まず次の事項を整理します。

  1. 誰が何株を保有しているのか
  2. 自分は、いつ、どのように株式を取得したのか
  3. 現在、誰が会社を経営し、支配しているのか
  4. 配当や株主総会は、これまでどのように扱われてきたのか
  5. 会社の財務状況について、どの資料を持っているのか
  6. 自分は株式を売りたいのか、情報を得たいのか、保有を続けたいのか
  7. 今後の相続や事業承継をどう考えるのか

これらを整理しないまま、会社に対して、

決算書をすべて見せてほしい
株式を買い取ってほしい
経営者の責任を追及する

と申し入れると、親族関係が先に悪化し、必要な情報を集めにくくなる場合があります。

反対に、親族関係を壊したくないという理由で何もしないまま時間が経過すると、資料が失われたり、会社の状況が変わったりすることもあります。

問題は、会社と争うか、何もしないかの二択ではありません。

家族の話合いだけで終わらせないために

親族経営会社の問題では、家族の感情や過去の経緯を無視することはできません。

しかし、

長男が継ぐことになっていた
親がそう言っていた
家族なのだから協力するべきだ
昔から兄に任せてきた

という説明だけでは、株式の帰属、会社の支配関係、売却条件は確定しません。

まず、家族関係と会社関係を分け、資料に基づいて現在地を確認します。

そのうえで、

  • 株式を保有し続ける
  • 会社や他の株主との話合いを行う
  • 株式の売却を検討する
  • 必要な会社情報を確認する
  • 相続・事業承継と一体で整理する
  • 必要に応じて株主としての権利を行使する

という選択肢を比較します。

親族経営会社の少数株主問題は、単なる家族げんかでも、単なる株価の問題でもありません。

家族関係をどこまで維持し、株主として何を守り、将来の相続や事業承継をどう処理するのか。

その全体を見ながら、最初の一手を決める必要があります。

 

※本稿は一般的な情報を整理したものです。個別の事案では、定款、株主名簿、株式取得の経緯、遺産分割の内容、持株割合、会社の財務状況などによって対応が異なります。

 

当事務所では、
目の前の法的正解だけではなく、
初動・情報整理・損失配分・将来維持可能性を含めた現実判断を重視しています。

実際の紛争や経営判断では、初動で何を整理し、何を守り、何を優先するかという判断が、その後の結果を大きく左右します。

そのため、法律的な見通しをご説明するだけでなく、状況や選択肢を整理し、依頼者の方が納得して判断できるよう支援することを大切にしています。

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前田 尚一(まえだ しょういち)
弁護士として35年以上の経験と実績を有し、これまでに多様な訴訟に携わってまいりました。顧問弁護士としては、常時30社を超える企業のサポートを直接担当しております。
依頼者一人ひとりの本当の「勝ち」を見極めることにこだわり、長年の経験と実践に基づく独自の強みを最大限に活かせる、少数精鋭の体制づくりに注力しています。特に、表面に見えない企業間の力学や交渉の心理的駆け引きといった実務経験は豊富です。 北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校、北海道大学法学部卒業。

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