専門家、AI、情報が増えるほど、
現実には「誰が全体を整理するのか」が難しくなっています。
法律、税務、経営、医療、AI。
分断された専門世界を接続し、
現実の判断へ翻訳する役割について、
最近強く考えるようになりました。
社会が複雑になるほど、問題は一つの専門分野だけでは整理できなくなります。
法律の問題に見えても、実際には経営判断であり、組織運営であり、情報整理の問題でもあります。
AIによって知識取得のコストが下がった現在、その傾向はさらに強まっています。
だからこそ私は、専門家そのものよりも、「異なる世界を接続する人」の価値に関心を持つようになりました。
AI時代に不足していくのは、
知識ではなく、
“翻訳する人”なのかもしれません。
社会には、かつてないほど大量の専門家、情報、AIツールが存在しています。
しかし現実には、
「誰に何を相談すればよいのかわからない」
「専門家ごとに言っていることが違う」
「組織の中で意思疎通が崩れている」
という場面は、むしろ増えているようにも見えます。
法律、税務、医療、経営、人事、IT、AI。
それぞれの専門分野は高度化し、
巨大組織では担当部署も細分化されています。
ところが、
実際に現場で問題が起きる局面では、
それらは別々には存在しません。
経営判断には、
法務だけではなく、
税務、資金、人間関係、承継、感情、時間制約など、
複数の現実が同時に押し寄せます。
そこで必要になるのは、
単に「知識を知っている人」ではなく、
異なる専門世界を接続し、
状況を整理し、
現実の言葉へ翻訳できる人
です。
私は近時、
そのような存在を、
「翻訳型実務者」
として捉えるようになりました。
それは、
単なる通訳者や説明者ではありません。
例えば、
・大量の情報を整理する人
・専門家同士のズレを調整する人
・経営者の感覚を実務へ落とす人
・複雑な問題を構造化する人
・AIの出力を現実判断へ接続する人
そうした異なる世界を接続し、現実に動く判断へ落とし込む存在です。
派手ではありません。
SNSで目立つとも限りません。
しかし、
巨大企業の深部で、
あるいは小規模組織の中で、
実際には多数の人が依存している。
そんな人たちがいます。
AIによって、
情報取得や文章生成は急速に平準化しています。
けれども逆に、
・何を捨てるか
・どこが本当の問題か
・誰と誰を接続すべきか
・どこで止めるべきか
・どこまで引き受けるか
を整理する仕事は、
むしろ重くなっています。
専門家が増えるほど、
翻訳者が必要になる。
AIが進むほど、
人間側の判断と統治が重要になる。
最近は、
そのように感じる場面が増えました。
法律実務でも同じです。
単に法律知識を提示するだけでは、
現実は動きません。
経営者、
資産家、
組織責任者、
承継局面にある方ほど、
「法的正解」
だけではなく、
“複数世界をどう接続するか”
に悩まれているように思います。
当事務所でも、
単なる勝敗や結論だけではなく、
・何を守るのか
・どこまで負担を引き受けるのか
・どの順番で整理するのか
・誰と誰の言葉を翻訳するのか
という観点を重視しています。
AI時代は、
巨大化の時代であると同時に、
少数高密度型の実務者
の価値が、
静かに上がっていく時代なのかもしれません。
最近は、
法律・経営・技術・現場の間を行き来しながら、
静かに問題整理を支えている方々と出会うことがあります。
表には出にくい仕事ですが、
社会が複雑になるほど、
そうした役割の重要性は高まっていくのかもしれません。
なお、こうした「異なる専門世界を接続する」という問題意識は、以前から当事務所で取り組んできたテーマでもあります。
士業・専門家連携については、こちらもご参照ください。
当事務所では、
目の前の法的正解だけではなく、
初動・情報整理・損失配分・将来維持可能性を含めた現実判断を重視しています。
関連記事:「私は相談で何を聞くのか ―― 法律相談の前に整理したいこと」
あわせてお読みください:
「判断の現場に立ち続けるということ」
『恐怖と向き合い、なお判断し続けるという仕事
――弁護士として、人生の修羅場に立ち会ってきて思うこと』
【判断の基準を整理する】
法律問題では、
情報量よりも、
何を基準に判断するかが重要になります。
判断とは何かを整理する
【実際の紛争ではどう現れるか】
判断基準は、
相続・労働・企業紛争などの具体的局面で初めて意味を持ちます。
判断を具体例で整理する






