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長く実務を続けていると、後から自分の仕事を説明できるようになることがある

弁護士として長く仕事を続けていると、扱う法律分野が変わることがあります。

一方で、扱う分野は変わらなくても、仕事の見え方が変わることがあります。

私自身、この数年、経営、マーケティング、組織論、知識創造論など様々な本を読み、AIについても考える機会が増えました。

しかし振り返ると、新しい考え方を身につけたというより、長年の実務の中で繰り返し見てきたことに、後から言葉が付いていった面の方が大きいように思います。

新しい答えを探していたつもりが、昔から見ていたことに名前が付いただけだった

長く実務を続けていると、後から自分の仕事を説明できるようになることがある

若い頃は、目の前の案件を処理することに精一杯でした。

相談を受ける。

事実関係を整理する。

証拠を集める。

交渉し、訴訟に対応する。

その繰り返しです。

もちろん、その頃にも考えていたことはあります。

しかし、それを体系的に説明する余裕はありませんでした。

経験は積み重なっていきますが、その経験を振り返り、整理し、言葉にする時間はあまりありません。

私自身もそうでした。

この数年、経営、マーケティング、組織論、知識創造論など、さまざまな分野の本を読む機会がありました。

AIについて考える機会も増えました。

読んでいる当時は、それぞれの著者が見ている世界に引き込まれたり、その理論や技法に感心したりすることもありました。

しかし今振り返ると、それらによって全く新しい考え方を身につけたというより、自分が長年の実務の中で見ていたことを説明する言葉を探していた面の方が大きかったように思います。

例えば、法律問題のように見えても、本質的には情報整理の問題であることがあります。

紛争のように見えても、実際には損失配分の問題であることがあります。

専門知識の問題に見えても、判断材料をどう整理するかの問題であることがあります。

相続でも、企業紛争でも、労働問題でも、不動産問題でも、表面上の争点は異なります。

しかし現場では、

何が起きているのか。

本当は何を心配しているのか。

何を守りたいのか。

どこで損失を止めたいのか。

どの選択肢を残したいのか。

そうしたことを整理する場面が繰り返し現れます。

振り返ると、私は昔からそのような仕事をしていたのだと思います。

ただ、当時はそれをうまく説明できませんでした。

経験としては持っていても、言葉として整理されていなかったのです。

長く実務を続けていると、新しい答えを探しているつもりで、実は昔から見ていたことを説明する言葉を探していることがあります。

新しい理論を発明したわけではありません。

過去の経験に、後から名前が付いていく。

その方が実感に近いように思います。

最近、「初動で結果が変わる」「情報整理」「損失配分」「将来維持可能性」といった言葉を使うことがあります。

それらは新しい思想というより、長年の実務の中で繰り返し見てきた現象を整理するための言葉です。

実務の現場では、法律の正解だけで解決できる問題もあります。

一方で、結論に至る前の整理そのものが結果を左右することも少なくありません。

長く実務を続けていると、結論を急ぐよりも、まず何を整理するのかに目が向くようになります。

最近の記事で書いていることも、何か新しい主張というより、そうした長年の観察を少しずつ言葉にしている記録なのかもしれません。

前田 尚一(まえだ しょういち)
弁護士として30年以上の経験と実績を有し、これまでに多様な訴訟に携わってまいりました。顧問弁護士としては、常時30社を超える企業のサポートを直接担当しております。
依頼者一人ひとりの本当の「勝ち」を見極めることにこだわり、長年の経験と実践に基づく独自の強みを最大限に活かせる、少数精鋭の体制づくりに注力しています。特に、表面に見えない企業間の力学や交渉の心理的駆け引きといった実務経験は豊富です。 北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校、北海道大学法学部卒業。

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