OEM契約、秘密保持契約、業務委託契約、販売店・代理店契約、共同開発・知的財産関係契約、M&A契約。
企業活動では、さまざまな場面で契約書が必要になります。
契約書レビューでは、法的な問題、不利益な条項、必要な条項の欠落、曖昧な表現、実際の取引との不整合などを確認し、必要な修正を検討します。
もちろん、これらは重要です。
しかし、事業上重要な契約では、問題を発見したところで検討が終わるとは限りません。
その問題について、この会社はどうするのか。
契約書の検討には、最後にその判断が残ります。
契約書の問題を見つけることと、その会社がどうするかを決めることは、同じではありません。
契約書レビューで検討すること
一般に契約書レビュー、あるいは契約書チェックといえば、契約書について、
法的に問題のある条項がないか。
自社に不利益な条項や、過大なリスクを負わせる条項がないか。
必要な条項が欠けていないか。
条項間に矛盾や曖昧さがないか。
実際の取引内容や商流と契約内容が一致しているか。
そして、どこを修正し、追加し、削除する必要があるか。
こうした事項を検討することが中心になります。
いずれも重要な検討です。
また、契約には一定の類型があります。
OEM契約、秘密保持契約、業務委託契約、販売店・代理店契約、共同開発契約、M&A契約など、それぞれについて典型的に問題となる事項があり、契約実務の蓄積もあります。
したがって、契約書を検討するのであれば、その契約類型について、現在どのような契約内容が一般的なのか、どのような問題が実務上生じているのか、法制度や取引実務がどうなっているのかを確認する必要があります。
類型や標準を知ることは、契約書を検討するための重要な出発点です。
しかし、事業上重要な契約では、それだけで答えが決まるとは限りません。
問題を見つけた後に、判断が残る
例えば、自社ブランドの商品を他社に製造委託するOEM取引を考えてみます。
契約書を検討した結果、製造上の事故が起きた場合に、自社が大きな負担を負う可能性があることが分かったとします。
これは重要な問題の発見です。
しかし、それだけでは、会社として何をすべきかは決まりません。
相手方に、より大きな責任を負うよう求めるのか。
損害賠償の範囲や上限をどのように定めるのか。
保険による対応を考えるのか。
検査や品質管理の仕組みそのものを変えるのか。
他の製造委託先を確保しておくのか。
あるいは、条件によっては、その取引自体を再検討するのか。
一つのリスクに対しても、いくつもの対応が考えられます。
どれが正しいかは、契約書だけを見ても決まりません。
同じOEM契約でも、守るべきものは会社によって違う
ある会社にとって、OEM取引で最も避けたいのは、製造不良による商品の回収かもしれません。
別の会社では、独自のレシピ、製造方法、ノウハウが外部に流出することの方が重大かもしれません。
特定の製造会社への依存度が高い企業であれば、供給停止が事業継続そのものを脅かすことがあります。
ブランドを重要な資産としている会社であれば、直接発生する損害額以上に、消費者からの信用を失うことが重大な問題になることもあります。
会社によって、守るべきものも、引き受けることのできるリスクも違います。
さらに、相手方との力関係もあります。
法律上は自社に有利な条項を作ることができても、相手方がそれを受け入れなければ取引は成立しません。
反対に、取引を成立させることだけを優先して重要なリスクを引き受ければ、後に事業そのものを危うくすることもあります。
契約実務では、
何が法的に可能か
だけではなく、
この会社は、この局面で何を選ぶのか
という判断が必要になります。
M&Aなら分かりやすい
M&Aを考えると、この問題はより明確です。
会社を買収する契約について、契約書だけを渡されて、
「自社に不利なところがないか確認してください」
というだけで十分な検討ができるとは、通常考えにくいでしょう。
なぜその会社を買収するのか。
対象会社のどこに価値を見いだしているのか。
どのような問題が判明しているのか。
どのリスクまで買主が引き受けるのか。
買収後に何をする予定なのか。
それらによって、同じ契約条項でも意味が変わります。
M&Aであれば当然に見えるこの問題は、程度の差はあっても、OEM契約、販売提携契約、共同開発契約などにも存在します。
契約書は、それが使われる事業から切り離して考えることができないからです。
契約書から、取引へ。取引から、会社へ。
そうすると、契約書を深く検討しようとすればするほど、契約書の外側を見る必要が出てきます。
どのような取引なのか。
なぜこの取引を始めるのか。
相手方との関係はどうなっているのか。
この取引がうまくいかなかった場合、何が起きるのか。
会社として何を守らなければならないのか。
そして、どこまでならリスクを取ることができるのか。
契約書を見るために取引を知り、取引を理解するために会社を知る。
事業上重要な契約ほど、この順序が重要になります。
会社を知っている弁護士がいるということ
契約書が必要になるたびに弁護士を探し、その都度、会社の事業内容や取引の経緯を説明する。
その方法で十分に対応できる契約もあります。
しかし、事業上重要な契約になるほど、その時点だけを切り取って会社を理解することには限界があります。
当事務所では、従来、主として顧問先企業について、その会社の実情を踏まえながら契約書を検討してきました。
継続的に関与していると、その会社が何をしているのかだけではなく、これまで何が起きたのか、どの取引関係が重要なのか、どの程度のリスクを取る会社なのか、経営者が何を重視しているのかも、次第に蓄積されていきます。
その蓄積は、契約書を検討するときにも意味を持ちます。
そして、契約締結後に問題が発生したときにも意味を持ちます。
なぜその条件を選んだのか。
何を守ろうとしていたのか。
どこまでのリスクを承知して契約したのか。
そこまで理解していれば、問題が起きた後も、契約書の文言だけから対応を考えるのとは違った判断が可能になります。
重要な問題が起きてから会社を説明するのではなく、重要な判断が必要になったときには、既に会社を理解している弁護士がいる。
顧問弁護士との継続的な関係には、そのような意味もあります。
当事務所が契約書の検討で重視していること
当事務所では、事業上重要な契約について、
全ての顧問先企業を直接担当する私自身が、
その契約類型について現在の法務・取引実務を確認し、
→ 取引の実情を把握する
→ リスクを発見し、評価する
→ その会社が守るべきものを明確にする
→ どのリスクを取り、何を求めるのかを判断する
→ その判断を契約条件その他の具体的な対応に反映する
という工程を重視しています。
これは、短時間で多数の契約書を処理することとは、仕事の性質が異なります。
相応の調査と、その会社についての理解が必要になります。
そのため、現在、当事務所では、一般的な契約書の単発レビューを広くお受けする体制とはしていません。
もっとも、企業にとって重要な契約について、事業や取引の実情を理解したうえで検討し、その後の運用も含めて継続的に関与することは、当事務所が重視している企業法務の一つです。
契約書レビューによって問題を発見することは重要です。
しかし、企業にとって本当に難しいのは、その先にあることがあります。
見つかった問題について、この会社はどうするのか。
契約書を検討する仕事も、最後には、この判断の問題につながっていきます。
当事務所では、
目の前の法的正解だけではなく、
初動・情報整理・損失配分・将来維持可能性を含めた現実判断を重視しています。
実際の紛争や経営判断では、初動で何を整理し、何を守り、何を優先するかという判断が、その後の結果を大きく左右します。
そのため、法律的な見通しをご説明するだけでなく、状況や選択肢を整理し、依頼者の方が納得して判断できるよう支援することを大切にしています。
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企業の契約書レビューについて
OEM契約その他の事業上重要な契約について、当事務所における現在の取扱いと、今後の対応についてはこちらをご覧ください。
継続的に会社を理解するということ
当事務所では、問題が発生したときだけではなく、企業の事業や取引の実情を継続的に理解しておくことが、重要な局面での判断にもつながると考えています。






