月刊「財界さっぽろ」2017年11月取材
会社を守る法律講座
顧問先社長との談話です。
A社長 日本経済新聞の「働き方改革 さびつくルール」という連載を見たのですが、トヨタが導入を目指している裁量労働的に柔軟に働ける新制度が気になっています(2017年9月12日朝刊参照)。時間になるべく縛られずに働けるようにするというもので、私の会社でも活用できそうです。
前田 「トヨタ流ホワイトカラーエグゼンプション(脱時間給制度)の実現」などと記述されていますね。働く時間ではなく成果に応じて賃金を支払う制度である「脱時間給制度」などと〝マジックワード〟が使われると、経営者なら飛びつきたくなるでしょう。
しかし、この制度は年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタントらを労働時間の規制対象から外そうとするもので、対象は限定的。15年の法案提出以来「残業代ゼロ法案」と批判を浴びて塩漬けになっていたものです。
A社長 それでも、紙面で紹介されているように「残業時間の制約で作業をやめなくてはいけないのはもどかしい」という現場の声には共感できます。
前田 例えば、電通過労自殺事件を社会問題として捉える考え方は、従来の「ブラック企業」に対する非難・批判と同様であり、法定労働時間を超えた労働自体を社会悪とするものです。社会の風潮とA社長が向いているベクトルが違うことにお気づきでしょうか。
紙面でも「成果に応じて賃金を支払う脱時間給の考え方を先取りする」と表し、「固定残業代とコアタイム無しのフレックスタイム勤務という既存制度の合わせ技」といった解説もされています。前段の美辞麗句にとらわれず、自社の実態と運用に照らし合わせて制度を設計すべきです。
A社長 具体的には。
前田 既存制度の活用を検討します。まず、固定残業代制度(定額残業代)は運用方法を間違えると、支払いが残業の対価として認められないうえ、割増賃金を計算するための算定基礎に組み込まれるというダブルパンチが発生することもあります。ほかにはフレックスタイム制、事業場外労働のみなし制、裁量労働制などを職種によって検討します。法定労働時間を弾力化できる変形労働時間制は、シフト制や時期的な繁簡への対応が必要な業種に効果的です。
いずれも法律で要件と効果が定められています。制度の限界を確認・把握した上で、就業規則の整備や労使協定の締結など制度に応じた対応をとります。
A社長 どの制度がいいのか、実際の運用は大変そうですね。
前田 安易な解決手段に飛びつくと、かえって事をこじらせますよ。抜本的に制度を検討するのであれば、いつでもお手伝いします。気になる制度が目に入ったら、今後もご相談ください。







