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第39回 《番外編》気弱なP太郎君が、極悪人となるプロセス

月刊「財界さっぽろ」2014年10月取材

会社を守る法律講座

経営に携わっていると、良くも悪くも物事が本人の意向とは別に突然一人歩きしていく場面にしばしば遭遇されると思います。
今回は、少し横道にそれた話を。サクセス・ストーリーならず、「転落」ストーリーです

キーワードは「魔が差す」。辞書によると「悪魔が心に入りこんだように、ふとふだんでは考えられないような悪念を起こす」(広辞苑)と説明されています。

では、ちょっと気弱なP太郎君が、極悪人となるプロセスを追ってみることにしましょう。

実家暮らしのP太郎君はフリーター。〝オレの才能を見出す賢人はいない〟と公言しているP太郎君ですから、親に遊ぶ小遣いをせびるわけにはいきません。
そこで彼は、隣家の一人暮らしのお婆ちゃんの家に忍び込み、年金を拝借しようと企てました。自分が「大器晩成」したら、100倍にして返せばよい、と。

それらしく、パンストをかぶって忍び込み、年金をせしめるためにタンスの引き出しを開けました。これで窃盗罪(刑法235条)が成立します。

もっとも、そっと盗むのは窃盗ですが、盗むための手段として暴行や脅迫をすると強盗です。窃盗罪であれば1月以上10年以下の懲役ですが、強盗罪だと5年以上20年以下の懲役。刑法236条で刑罰は飛躍するのです。

お婆ちゃんは、ぐっすり寝込んでいます。ところがタンスの引き出しを開けた途端「誰だい」と目覚めました。お婆ちゃんは「どろぼう~」と叫び、P太郎君にしがみつきました。

動揺するP太郎君は「はなせ、はなさないとぶっ殺すぞ」と怒鳴り、押し倒してしまいました。これで脅迫と暴行にあたります。
脅迫、暴行を用いても盗むための手段としなければ、刑法236条の強盗にはなりませんが、事後強盗罪という犯罪(刑法28条)があります。今回のケースはこれにあたり「逮捕を逃れる」ために「暴行又は脅迫をした」として強盗と同罪とみなされます。一挙に5年以上20年以下の懲役に罪が大きくなりました。

しかも、転倒したお婆ちゃんは、タンスに頭をぶつけ、打ち所が悪かったようで亡くなったしまったのです。P太郎君は窃盗罪から強盗罪、あっという間に強盗致死罪(死亡させたときは死刑又は無期懲役)になってしまいました。

刑法には刑の軽減のほか、さまざまな決まりがあるのでケースバイケースですが、P太郎君の今回のような例は、もしかしたらありがちなんて思いませんか。
「死刑又は無期懲役」と言われると多少同情もしますが、「死人に口なし」の状況です。強盗致死罪は裁判員裁判の対象です。彼の弁解を聞いた裁判員は、極悪人ではないと信じてくれるのでしょうか。

 

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表弁護士
出身地:北海道岩見沢市。
出身大学:北海道大学法学部。
主な取扱い分野は、交通事故、離婚、相続問題、債務整理・過払いといった個人の法律相談に加え、「労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」も取り扱っています。
30社以上の企業との顧問契約について、代表自身が直接担当し顧問弁護士サービスを提供。

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