AIによって情報収集や分析の効率は飛躍的に向上しています。
しかし現実の経営や人生では、
最後に判断する人が必要です。
そして実は、その判断者を支える人もまた必要です。
・情報を集める人
・分析する人
・判断する人
これらは同じではありません。
AIが発達するほど、判断者を支える参謀型人材の価値はむしろ高まるように思います。
AI時代に価値が高まる人――判断者を支える参謀という存在
AIが進化しても最後に残るもの
生成AIの進歩によって、
・情報収集
・文書作成
・要約
・比較分析
などは急速に効率化されています。
法律実務でも、
・契約書のたたき台
・判例の検索
・論点整理
といった作業は以前よりはるかに短時間で行えるようになりました。
今後もこの流れは続くでしょう。
しかし現実の世界では、
情報が整理されたからといって、
判断が終わるわけではありません。
最後には、
・何を守るのか。
・何を捨てるのか。
・どのリスクを取るのか。
という判断が残ります。
そしてその結果責任を引き受ける人も必要になります。
判断者だけでは足りない
しかし実務の現場を見ていると、
実は判断者だけが重要なのではありません。
その判断者を支える人もまた重要です。
・経営者
・会社支配権を争う株主
・事業承継を考えるオーナー
・立ち退きを求められた高齢者
重要な局面では、
最終的に判断する人が存在します。
しかし、
その人たちは必ずしも大量の情報を処理することが得意とは限りません。
むしろ、
優れた判断者ほど、
何を見ればよいかを知っています。
そして、
本当に必要な情報だけを欲しがります。
第2段階と第3段階の間にあるもの
一般に、
情報収集
↓
分析
↓
判断
という流れで考えられます。
AIは前二者を大きく変えつつあります。
しかし現実には、
分析と判断の間にもう一つ工程があります。
それは、
判断者が必要とする情報を選別し、
構造化し、
提示する工程です。
私はこれを、
第2段階と第3段階の間にある
「第2.5段階」
と考えています。
COO、社長室長・幹部補佐、幕僚長、投資銀行、一定のコンサルタントや弁護士などの高付加価値業務は、まさにこの「第2.5段階」にあります。
多くの人は、
「情報が足りないから決められない」
と思っていますが、実際の経営現場では、
「情報は十分あるのに決められない」
ことの方が多い。
たとえばM&Aでも、
・財務資料は揃っている
・法務DDも終わっている
・税務論点も整理済み
それでも社長が決められない。
なぜなら、この買収は会社の方向性として正しいのか
という問いにはデータだけでは答えられないからです。
ここでは単なる情報整理では足りません。
・判断者が何を気にしているか。
・何を決めようとしているか。
・何を恐れているか。
・何を守ろうとしているか。
それを理解しなければならないからです。
この業務は、判断そのものではなく、判断可能な状態を作る仕事です。
単なる情報整理ではなく、
例えば「社長が結局どこを見て決めるのか」
を理解している人の価値は高い。
優秀な参謀は判断者ではない
歴史を見ても、
優秀な参謀は必ずしも判断者ではありません。
歴史上にも、自ら天下を取るのではなく、
天下を取ろうとする人物を支えた優秀な参謀が存在しました。
黒田官兵衛はその代表例でしょう。
判断を代行するのではなく、
判断に必要な材料を整える。
何が本質なのかを示す。
複雑な状況を整理する。
そして最後は判断者に委ねる。
そのような役割です。
優秀な参謀は、
経営者ではありません。
しかし経営者が必要とする情報を見抜くことができます。
AIが代替しにくい理由
AIは膨大な情報を処理できます。
しかし、
判断者が本当に必要としているものを嗅ぎ取ることは容易ではありません。
なぜなら、
判断者自身が言語化できていない場合があるからです。
・本人も気付いていない前提
・本人も整理できていない不安
・本人も明確にしていない優先順位
そこを観察し、
整理し、
提示する。
この仕事は、
単なる情報処理ではありません。
人間を理解する仕事です。
最近の生成AIは、
・長期対話、
・行動履歴、
・パターン推定、
・意図推測、
といった分野で急速に能力を高めています。
実際、一定期間対話を続けると、その人の思考傾向や価値観について、人間以上に整理された分析を示すこともあります。
しかし、それでも生成AIは基本的に過去データから推論を行うアルゴリズムです。
人間の感情や価値観についても、膨大な事例から推論された近似値を構築しているに過ぎません。
そして何より、
現場で起きていることを自ら観察することができません。
・人の表情
・沈黙
・声色
・会議室の空気
・交渉相手の視線
・説明しにくい「違和感」
そうしたものは、現場で実際に人間が接触することによって初めて得られる情報です。
さらに実務の現場では、
「なぜそう思うのか説明できないが、何かおかしい」
という感覚が重要になることがあります。
もちろん、それは単なる勘ではありません。
長年の観察や経験の蓄積が無意識に反応している場合が少なくありません。
料理でいえば山椒のようなものです。
主役ではありません。
しかし、それが入ることで全体の味が変わります。
優秀な参謀型人材は、
判断そのものを行う人ではありません。
判断者が見落としそうな違和感を拾い、
構造化し、
必要な情報を補い、
判断者に届ける人です。
もちろん、「参謀は安全」ということではありません。
あくまで、「優秀な参謀」の話です。
さらに優秀な参謀には、
能力だけでは説明できない役割があります。
判断者との信頼関係です。
この人は自分を理解している。
この人には本音を話せる。
そうした関係があるからこそ、
言語化されていない不安や違和感も共有されます。
歴史上の参謀と主君の関係にも、
しばしばそのような要素が見られます。
専門家不足から判断者不足へ
私は近年、
専門家不足よりも、
判断者不足の方が深刻な問題になりつつあると感じています。
AIによって専門知識へのアクセスは容易になります。
しかし、
結果責任を引き受けて判断する人は増えません。
むしろ減るかもしれません。
そしてもう一つ、
見落とされがちな不足があります。
それは、
判断者を支える参謀不足です。
判断者は自ら全ての情報を集め、
分析し、
整理できるわけではありません。
だからこそ、
判断者が本当に必要とする情報を見抜き、
構造化し、
届ける人が必要になります。
AI時代に最後まで残るのは、
判断者だけではありません。
判断者不足が進む時代には、
判断そのものだけではなく、
判断可能な状態を作る人の価値もまた高まるのだと思います。
当事務所では、
目の前の法的正解だけではなく、
初動・情報整理・損失配分・将来維持可能性を含めた現実判断を重視しています。
実際の紛争や経営判断では、何を守り、何を優先するかが結果を左右します
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