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被害者が、近くの横断歩道を渡らず無灯のまま自転車に乗って幹線道路を横断中、交通事故に遭い、首から下が不随となったという事案。
被告は、7割以上の過失相殺をすべきであると主張していましたが、徹底抗戦した結果、裁判所は、近くの横断を通行しなかったとしても重大な過失とはいえないとして、過失割合を3割にとどめる判断をしました
また、将来の介護料として日額5000円が認められました。
そして、本件では、近親者らの慰藉料も認めらました。

本件では、訴訟提起前の示談交渉では、自動車共済(保険会社と同様の業務を営む。)は、被害者の過失割合が4割5分であると主張し、示談金額として54万円の支払を提示していませんでした。
しかし、裁判をした結果、近親者らの慰藉料も含め、総額1,900万円弱の賠償が認められたのです(実際の受取額は、遅延損害金も含めた2,300万円強)。
この金額は、全損害額として認定された約9,700万円(逸失利益と将来介護費用等については中間利息を控除)について過失相殺をしたうえ(3割減)、すでに支払済みの治療代など既払金約5,000万円を差引いて(損害の填補)、弁護士費用を加算した金額です。

 

裁判所認容額(円) 共済提示額(円) 備考
治療費 12,829,713 12,820,000
入院雑費 490,000 280,000
休業損害 3,122,695 2,660,000
逸失利益 25,145,916 26,550,000
将来の介護料 27,189,032 16,190,000 大きく違う
生活装具 61,487 60,000(?)
慰藉料 25,000,000 12,500,000 大きく違う
近親者慰藉料 3,000,000 0 共済はゼロ査定
その他 60,000
小  計 96,838,844 71,060,000 この段階で2,500万円以上違う
過失割合 30%(減) 55%(減) 過失割合には大きな違い
損害の填補 50,748,329 38,540,000 ここは算定した時期の違い
弁護士費用 1,700,000 0 共済はゼロ査定
合  計 18,738,861 540,000
遅延損害金 4,410,049 0 共済は事故後2年後でもゼロ査定
総合計 23,148,910 540,000 22,608,910円の増額

 

死亡あるいは重大な後遺障害がある事案では、保険会社・自動車共済の保険金支払基準と裁判所との間には損害額算定基準とでは、基準自体に差異があるなどの理由で、裁判を経た方が獲得できる金額が多くなるのが通例です(裁判を経て金額が大きくなった当事務所が担当した死亡事故の事案)。

本件は、保険会社(自動車共済)の残額提示額はわずか54万円だったが、裁判を起こした結果、2,300万円余りの支払を受けることができたのです。

もちろん裁判となれば、保険会社・自動車共済側もプロであるから、賠償額を減額するために、いろいろな法律的な争点を提示してくるのが一般であり、それに対抗するためには、専門な理論武装も必要となります。本件が「自動車保険ジャーナル」紙で紹介されたのは、自動車共済側が問題とした過失相殺や将来の病院入院介護料についても、裁判所で闘った結果、被害者の立場で納得できる程度にまで解決できたからです。

しかし、それにしても、本件で自動車共済の提示した金額は、驚くのを通り越して、あきれるほかありません。
専門家に相談することもなく、「こんなものか?!」と信じ込み、言われるままに示談してしまう被害者・遺族も、少なくないに違いありません。わが国は、保険制度が相当整備されているはずなのに、実に残念なことです。

本件でも、ご本人が病院で寝たきりだったので、息子さんが自動車共済と話をしておられたのですが、もし共済の担当者の提示を鵜呑みにしていたら、・・・・・・。そう、なんとも言いいようのない、そんな事態になっていた、かもしれません。

まさに、 『法律』は、弱い立場にあるからといって味方をしてくれる訳ではなく、『法律』は、“ 法律を知っている者に味方する!!”と言わざるを得ない局面でした。

 

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前田 尚一(まえだ しょういち)
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
ただ、私独自の強みを生かすことを、増員・規模拡大によって実現することに限界を感じています。今は、依頼者と自ら対座して、依頼者にとっての「勝ち」が何なのかにこだわりながら、最善の解決を実現を目ざす体制の構築に注力しています。実践面では、見えないところの力学活用と心理戦について蓄積があると自負しています。

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