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非上場会社の少数株主に何ができるか|単独株主権・少数株主権と実際の活用

 

非上場会社の少数株主に認められる単独株主権・少数株主権を整理し、実際の紛争や株式売却でどの権利をどう使うべきかを解説します。

少数株主権を列挙するだけでは、会社には対抗できない

 

非上場会社の少数株主であっても、何もできないわけではありません。

会社法は、一株でも行使できる権利、一定割合以上の株式または議決権を持つ株主に認められる権利、会社の組織再編など特定の局面で行使できる権利を定めています。

しかし、条文上の権利があることと、その権利を使って問題を解決できることは同じではありません。

株主名簿や計算書類を閲覧するのか、会計帳簿まで求めるのか、株主総会を動かすのか、取締役の責任を追及するのか。それとも、株式の売却条件を整えるための交渉材料として使うのか。

少数株主問題では、権利を行使する前に、会社の支配関係、株式の帰属、株価、会社側の利害、親族関係、証拠の所在、最終的に何を実現したいのかを整理する必要があります。

少数株主権は、それだけで答えになるものではありません。

会社と株主を取り巻く構造を見極めたうえで選択する、問題解決のための道具です。

少数株主であっても、何もできないわけではない

非上場会社では、代表取締役や多数株主が会社経営を事実上支配し、少数株主には何もできないように見えることがあります。

株主総会の通知が十分に届かない。

決算内容について説明を受けられない。

配当がないまま、経営者一族には多額の役員報酬が支払われている。

株式を売却したくても、会社から極端に低い金額しか提示されない。

このような場面で、少数株主は必ずしも無力ではありません。

会社法には、一株しか持っていない株主でも行使できる権利があります。また、総株主の議決権または発行済株式の一定割合を持つ株主に限って認められる権利もあります。

一般に、前者は「単独株主権」、後者は「少数株主権」と呼ばれます。

もっとも、実際の紛争では、権利の名称と条文を知るだけでは足りません。

重要なのは、次の点です。

・何を明らかにしたいのか

・会社に何を求めるのか

・株主として残るのか、株式を売却するのか

・交渉で解決するのか、訴訟まで進むのか

・その権利行使が、会社側にどのような反応を起こすのか

最終的な目的が違えば、選択すべき権利も、その行使方法も変わります。

「非上場会社」と会社法上の「公開会社」は同じではない

ここでは、実務上一般的な表現として「非上場会社の少数株主」を扱います。

ただし、会社法上の「公開会社」は、証券取引所に上場している会社という意味ではありません。

会社法上の公開会社とは、発行する株式の全部について譲渡制限を設けている会社ではない株式会社をいいます。

したがって、証券取引所に上場していない会社でも、会社法上は公開会社である場合があります。

反対に、すべての株式について譲渡制限を設けている会社が、会社法上の「公開会社でない株式会社」です。

この区別は重要です。

株主権によっては、公開会社の場合、「6か月前から引き続き株式を保有していること」などの保有期間要件が課される一方、公開会社でない株式会社では、その要件が適用されないことがあるからです。

どの株主権を行使できるかを検討する前に、定款、登記事項証明書、株式の内容などを確認する必要があります。

一株でも行使できる主な権利――単独株主権

一株または一単元でも株式を持つ株主が行使できる権利を、一般に単独株主権と呼びます。

もっとも、議決権の有無、会社の機関設計、定款、株式の種類、権利行使の目的などによって、具体的な取扱いは異なります。

1 定款の閲覧・謄写を求める権利

株主は、会社の営業時間内に、定款の閲覧・謄写などを請求できます(会社法31条)。

定款は、その会社における基本的な規則です。

株式の譲渡制限、株主総会の招集方法、取締役会や監査役の設置、役員の任期、決算期などを確認する出発点になります。

少数株主問題で何らかの行動を起こす前に、まず確認しておきたい資料の一つです。

2 株主名簿の閲覧・謄写を求める権利

株主は、一定の手続により、株主名簿の閲覧・謄写を請求できます(会社法125条)。

誰が、どれだけの株式を持っているのかは、会社の支配関係を把握するうえで重要です。

ただし、株主としての権利行使以外の目的で請求する場合や、会社の業務遂行を妨げ株主共同の利益を害する目的で請求する場合など、法律上の拒絶事由(会社法125条3項)があるときは、会社が請求を拒むことがあります。

「株主であれば、理由を問わず株主名簿を見られる」という制度ではありません。

3 株主総会議事録を閲覧する権利

株主は、株主総会議事録の閲覧・謄写を請求できます(会社法318条)。

株主総会議事録を確認することにより、役員の選任・解任、役員報酬、剰余金の配当、定款変更などが、いつ、どのような決議によって行われたのかを把握できる場合があります。

実際には株主総会が開催されていないのに、議事録だけが作成されていたのではないかという問題が生じることもあります。

4 計算書類等を閲覧する権利

株主は、貸借対照表、損益計算書、事業報告、附属明細書などの計算書類等について、閲覧・謄写等を請求できます(会社法442条)。

これにより、会社の資産、負債、売上げ、利益などの概況を確認できます。

ただし、計算書類だけでは、個別の取引、役員との資金移動、関連会社との取引、多額の経費の具体的内容までは分からないことがあります。

より詳細な調査が必要な場合には、後に述べる会計帳簿閲覧・謄写請求を検討することになります。

5 株主総会で質問し、説明を求める権利

株主は、株主総会において、報告事項や決議事項に関する説明を求めることができます。

取締役等は、原則として、株主から求められた事項について必要な説明をしなければなりません(会社法314条)。

もっとも、質問すれば、望む回答が得られるとは限りません。

質問が議題と関係しない場合、調査に時間を要する場合、会社その他の者の権利を侵害するおそれがある場合などには、説明を拒まれることがあります。

株主総会の場で何となく質問するのではなく、どの事実について、何を確認し、その回答をその後どのように使うのかを準備しておく必要があります。

6 株主総会の場で議案を提出する権利

議決権を有する株主は、株主総会の場において、その株主総会の目的である事項について議案を提出できます(会社法304条)。

例えば、取締役選任が議題となっている場合に、会社側が提案した候補者とは別の候補者を提案することなどが考えられます。

これに対し、新たな事項を株主総会の議題として追加させる請求や、その議案の要領を招集通知に記載させる請求には、取締役会設置会社の場合、一定の議決権要件があります。

株主総会の場で行う議案提出と、事前に行う株主提案とは区別する必要があります。

7 株主総会決議の取消し等を求める権利

株主総会の招集手続や決議方法が法令・定款に違反している場合、決議内容が定款に違反している場合、または決議方法が著しく不公正である場合には、株主総会決議取消しの訴えを提起できることがあります(会社法831条)。

取消しの訴えは、原則として決議の日から3か月以内に提起しなければなりません。

決議が外形上も存在しない場合には、株主総会決議不存在確認の訴えが問題となります。決議内容そのものが法令に違反する場合には、決議無効確認の訴えが問題となることもあります(会社法830条)。

どの訴訟類型を選ぶかによって要件や期間が異なります。

8 取締役の違法行為の差止めを求める権利

取締役が法令または定款に違反する行為をし、その行為によって会社に著しい損害などが生ずるおそれがある場合、一定の要件のもとで、その行為の差止めを請求できます(会社法360条)。

会社の機関設計によっては、「著しい損害」ではなく「回復することができない損害」が生ずるおそれが要件となります。

どの会社にも同じ要件が適用されるわけではありません。

また、取締役の行為ではなく、募集株式や新株予約権の発行が問題となる場合には、別の差止請求が問題となります。

9 不公正な新株発行等の差止めを求める権利

法令・定款に違反し、または著しく不公正な方法によって募集株式や新株予約権が発行され、株主が不利益を受けるおそれがある場合には、その発行の差止めを請求できることがあります(会社法210条、247条)。

会社支配権を巡る紛争では、特定の者に新株を発行して、多数派と少数派の持株比率を変えようとすることがあります。

新株発行の効力が生じた後では、差止めによる対応ができなくなる可能性があります。

このため、払込期日や割当日の確認、発行目的、発行価格、割当先、取締役会決議や株主総会決議の有無などを早急に確認し、必要に応じて仮処分を検討しなければなりません。

10 株主代表訴訟を提起する権利

取締役等が会社に対して損害賠償責任を負う場合、株主は、会社に対して、その取締役等の責任を追及する訴えを提起するよう請求できます。

会社が原則として60日以内に訴えを提起しないときは、株主自身が株主代表訴訟を提起できることがあります(会社法847条)。

会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、60日を待たずに提訴できることもあります。

公開会社では、原則として6か月前から引き続き株式を保有していることが必要ですが、公開会社でない株式会社では、この保有期間要件はありません。

ただし、株主代表訴訟は、株主個人が賠償金を受け取るための制度ではありません。

訴えが認められた場合、取締役等が支払う賠償金は、原則として会社に帰属します。

株主個人の経済的利益を回復する手段として適切かどうかは、別途検討する必要があります。

11 反対株主として株式買取請求をする権利

事業譲渡、合併、会社分割、株式交換その他一定の重要な組織行為に反対する株主には、会社に対して、自己の株式を公正な価格で買い取るよう請求する権利が認められることがあります。

もっとも、対象となる行為、事前の反対通知、株主総会における反対、買取請求の期間などについて、厳格な手続要件があります。

単に組織再編に反対していたというだけで、後から当然に株式を買い取ってもらえるわけではありません。

会社から組織再編などの通知を受けたときは、期限を確認し、早期に対応を検討する必要があります。

一定割合以上の株式・議決権が必要となる主な少数株主権

一定割合以上の株式または議決権を有することを要件として認められる権利を、一般に少数株主権と呼びます。

要件には、総株主の議決権を基準とするものと、発行済株式数を基準とするものがあります。

また、公開会社の場合には、一定期間継続して株式を保有していることが必要となるものがあります。

定款によって、法律上の要件が緩和されていることもあります。

1 株主総会招集請求権――原則として議決権の3%以上

総株主の議決権の3%以上を有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項と招集の理由を示して、株主総会の招集を請求できます(会社法297条)。

会社が遅滞なく招集手続を行わない場合や、請求後一定期間内の日を株主総会の日とする招集通知が発せられない場合には、裁判所の許可を得て、請求した株主自身が株主総会を招集できることがあります。

公開会社では、原則として6か月前から引き続き株式を保有していることが必要です。

公開会社でない株式会社では、この保有期間要件はありません。

株主総会を招集できることと、提案した議案を可決できることは別です。持株比率、他の株主の意向、議決権行使の見込みまで検討する必要があります。

2 株主提案権――議決権の1%以上または300個以上の議決権

取締役会設置会社では、総株主の議決権の1%以上または300個以上の議決権を有する株主は、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とするよう請求できます(会社法303条)。

例えば、取締役の選任・解任、定款変更などを株主総会の議題とするよう求めることが考えられます。

公開会社では、原則として6か月前から引き続き株式を保有していることが必要です。

また、請求は、原則として株主総会の日の8週間前までにしなければなりません。

取締役会を設置していない会社では、議決権を有する株主は、原則として単独で議題の追加を請求できます。

3 議案要領通知請求権――議決権の1%以上または300個以上の議決権

取締役会設置会社では、総株主の議決権の1%以上または300個以上の議決権を有する株主は、株主が提出しようとする議案の要領を、株主総会の招集通知などに記載するよう請求できます(会社法305条)。

株主提案をしても、その内容が他の株主に伝わらなければ、賛同を得ることは困難です。

議案要領通知請求権は、提案内容を他の株主に知らせるための権利です。

もっとも、提案できる議案の数には制限があり、法令・定款に違反する議案や、実質的に同一の議案が過去に否決されてから一定期間を経ていない場合などには、請求が認められないことがあります。

4 株主総会検査役選任申立権――議決権の1%以上

総株主の議決権の1%以上を有する株主は、株主総会に先立ち、裁判所に対して検査役の選任を申し立てることができます(会社法306条)。

検査役は、株主総会の招集手続や決議方法を調査します。

株主総会の開催そのもの、出席株主の確認、委任状、議決権行使、議長の議事運営などを巡って紛争が予想される場合に問題となります。

会社支配権を巡る対立が深刻な場合には、後日の訴訟に備えて株主総会の手続を客観的に記録する意味を持ちます。

5 会計帳簿閲覧・謄写請求権――議決権または発行済株式の3%以上

総株主の議決権の3%以上、または発行済株式の3%以上を有する株主は、理由を明らかにして、会計帳簿やこれに関する資料の閲覧・謄写を請求できます(会社法433条)。

会計帳簿には、仕訳帳、総勘定元帳、補助簿などが含まれます。

計算書類だけでは分からない個別の取引や資金移動を確認するための重要な権利です。

もっとも、持株要件を満たせば、会社のすべての資料を無制限に閲覧できるわけではありません。

請求理由を具体的に示す必要があり、請求者が会社と実質的な競業関係にある場合など、法律上の拒絶事由があるときは、会社が請求を拒絶できることがあります。

6 業務・財産状況を調査する検査役の選任申立権――議決権または発行済株式の3%以上

会社の業務執行について、不正行為または法令・定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由がある場合、総株主の議決権の3%以上、または発行済株式の3%以上を有する株主は、裁判所に対して、会社の業務や財産状況を調査する検査役の選任を申し立てることができます(会社法358条)。

単に経営内容に不満があるというだけでは足りません。

どのような不正または重大な違反が疑われるのか、その根拠となる資料や事情を示す必要があります。

7 役員解任の訴え――議決権または発行済株式の3%以上

役員の職務執行に関して不正行為または法令・定款に違反する重大な事実があるにもかかわらず、株主総会でその役員を解任する議案が否決された場合があります。

この場合、総株主の議決権の3%以上、または発行済株式の3%以上を有する株主は、株主総会の日から30日以内に、その役員の解任を求める訴えを提起できることがあります(会社法854条)。

公開会社では、原則として6か月前から引き続き株式を保有していることが必要です。

役員に不正があるから直ちに解任訴訟を提起できるのではなく、原則として、先に株主総会へ解任議案を提出し、それが否決されていることが必要です。

8 株式会社解散の訴え――議決権または発行済株式の10%以上

総株主の議決権の10%以上、または発行済株式の10%以上を有する株主は、一定のやむを得ない事由がある場合、会社の解散を求める訴えを提起できることがあります(会社法833条)。

例えば、会社の業務執行が著しく困難となり、会社に回復することができない損害が生じ、または生ずるおそれがある場合が問題となります。

会社財産の管理または処分が著しく失当で、会社の存立を危うくする場合も対象となることがあります。

もっとも、会社の解散は、会社そのものを終了させる重大な手段です。

株主間に対立があることや、経営方針に不満があることだけで認められるものではありません。

会計帳簿閲覧請求は、決算書の閲覧とは異なる

少数株主問題で特に重要なのが、会計帳簿閲覧・謄写請求です。

計算書類を見ただけでは、会社の財産や取引の概要しか分からないことがあります。

例えば、次のような事項を確認するためには、総勘定元帳などの会計帳簿や関連資料が必要となる場合があります。

・代表取締役やその親族に対する支払い

・役員報酬や退職慰労金

・関係会社との取引

・会社から役員への貸付け

・会社所有不動産の売却代金

・特定の取引先に対する多額の支払い

・多額の接待交際費や業務委託料の内容

しかし、会計帳簿閲覧請求には、請求理由を具体的に示す必要があります。

「会社の経営が怪しい」「何か不正があると思う」という程度では、対象となる帳簿や請求の必要性が明らかでないとして争われる可能性があります。

何を疑い、どの取引を確認し、その結果を何に使うのかを整理する必要があります。

取締役会議事録は、当然に見られるわけではない

取締役会設置会社の株主が取締役会議事録を閲覧・謄写するには、原則として裁判所の許可が必要です(会社法371条)。

株主総会議事録や計算書類とは取扱いが異なります。

裁判所は、株主がその権利を行使するために議事録の閲覧等が必要か、会社や親会社・子会社に著しい損害が生ずるおそれがないかなどを審査します。

したがって、取締役会議事録を確認したい場合には、少なくとも次の点を整理する必要があります。

・いつ開催された取締役会の議事録か

・どの決議または報告を確認したいのか

・どの株主権を行使するために必要なのか

・株主総会議事録や計算書類など、他の資料では確認できないのか

「株主なのだから取締役会議事録も見せてほしい」というだけでは足りません。

株主権は、会社を困らせるための道具ではない

少数株主が会社から不合理な扱いを受けている場合、強い権利行使が必要なことはあります。

しかし、株主権を次々に行使すれば、有利な解決に近づくとは限りません。

例えば、株主名簿、会計帳簿、取締役会議事録を一斉に請求すれば、会社側は、少数株主が訴訟や責任追及の準備を始めたと受け止めるでしょう。

その結果、次のような事態が生じることがあります。

・会社側が防御態勢を固める

・関係者間で説明内容が統一される

・株式買取りの交渉が停止する

・親族間の対立が決定的になる

・新株発行や組織再編が検討される

・証拠や資料へのアクセスがさらに難しくなる

逆に、明確な目的も準備もないまま権利行使を予告するだけでは、「実際には何もできない」と見透かされることがあります。

権利は、強く見せるための飾りではありません。

実際に行使した場合の効果と反作用まで考えて、選択する必要があります。

最初に整理すべきなのは「何%持っているか」だけではない

少数株主問題では、持株比率の確認は不可欠です。

しかし、持株比率だけで対応方針が決まるわけではありません。

株主としての地位は確実か

名義上の株主と、実際に株式を引き受け、払込みをした者が一致しないことがあります。

家族経営の会社では、名義株、相続、贈与、株式の払込み、株券の交付などを巡って、誰が本当の株主であるかが争われることがあります。

株主名簿の記載だけでなく、設立時や増資時の資料、払込金の出所、株主総会への出席、配当の受領、当事者間の認識などを確認する必要があります。

株主権を行使する前提である株主の地位自体が争われる可能性があります。

会社法上の公開会社か、公開会社でない会社か

株式の譲渡制限、取締役会や監査役の設置、株券発行会社かどうかなどを、定款と登記事項証明書から確認します。

会社の機関設計によって、閲覧請求、差止請求、役員の任期などの取扱いが変わることがあります。

持株比率と議決権比率はどうなっているか

発行済株式数だけでなく、会社が保有する自己株式、議決権制限株式、種類株式、相互保有株式などを確認する必要があります。

「発行済株式の3%」と「総株主の議決権の3%」は、必ずしも同じではありません。

誰が他の株主の議決権を事実上まとめているのかという点も、会社支配の実態を判断するうえで重要です。

最終的に何を実現したいのか

少数株主の目的は、案件によって異なります。

・株式を適正な価格で売却したい

・会社の財産状況を知りたい

・配当を受けたい

・不正な支出を止めたい

・取締役の責任を追及したい

・経営に関与したい

・相続した株式を整理したい

・親族関係を壊さずに会社から離脱したい

目的が違えば、使うべき権利も、その順序も変わります。

会社側は何を守ろうとしているか

会社側にも、独自の利害があります。

少数株主に株式を持ち続けられたくない。

経営情報を開示したくない。

株式を高く評価されたくない。

過去の取引や資金移動を調査されたくない。

少数株主の要求を受け入れると、他の株主にも同様の対応を求められる。

会社側が何を守ろうとしているのかが分からなければ、有効な交渉材料も分かりません。

少数株主権は、最終目的から逆算して使う

少数株主が保有株式を売却したいのであれば、すべての株主権を徹底して行使することが目的ではありません。

会社の財産内容を確認し、株式価値を検討し、会社側または多数株主が買い取りに応じる合理的な条件を形成することが目的となります。

取締役の責任追及が目的であれば、対象となる行為、会社に生じた損害、取締役の関与、会社が自ら責任追及しない事情を、証拠によって組み立てる必要があります。

新株発行による持株比率の低下を防ぐことが目的であれば、差止めの要件と緊急性を検討し、交渉より先に仮処分を準備すべき場合もあります。

会社の経営内容を知ることが目的であれば、いきなり会計帳簿閲覧請求をするのではなく、定款、株主名簿、株主総会議事録、計算書類などを順に確認する方が適切な場合があります。

権利を調べてから目的を考えるのではありません。

目的と全体構造を確認したうえで、必要な権利を選択します。

権利行使の前に、時間の構造も確認する

少数株主問題では、時間も重要な判断要素です。

株主総会決議取消しの訴えには、原則として3か月の出訴期間があります。

役員解任の訴えには、株主総会の日から30日以内という期間制限があります。

組織再編に伴う株式買取請求には、事前の反対通知や買取請求の期間があります。

新株発行の差止めは、払込期日を過ぎてからでは手遅れになる可能性があります。

一方で、株式売却交渉では、性急な権利行使が交渉の余地を失わせることもあります。

したがって、次のような区別が必要です。

・直ちに動かなければ失われる権利

・証拠を確保してから行使すべき権利

・交渉の経過を見ながら使う権利

・最後まで実際には行使せず、選択肢として保持する権利

少数株主権には、行使できるかどうかだけでなく、いつ行使するかという問題があります。

「権利がある」と「解決できる」は同じではない

会社法は、少数株主にさまざまな権利を与えています。

しかし、少数株主が会社に対抗する場面で、条文だけが単独で働くわけではありません。

実際には、次のような事情が相互に関係しています。

・株主としての地位

・持株比率と議決権比率

・会社の支配関係

・会社資産と株式価値

・役員や多数株主の利害

・親族関係

・証拠の所在

・権利行使の期限

・交渉と訴訟の順序

・最終的に実現したい状態

少数株主権は重要です。

しかし、それは問題解決の完成品ではなく、会社と株主を取り巻く構造に応じて配置する部品です。

何を守り、どこまで争い、どの段階で交渉し、どこで終えるのか。

少数株主問題では、個々の権利を知ることに加え、その権利を働かせる全体の構造を判断することが必要です。

少数株主問題についてのご相談

当事務所では、非上場会社の少数株主問題について、単に行使可能な株主権を列挙するのではなく、株主関係、会社支配、株価、会社財産、証拠、交渉可能性などを整理したうえで、対応方針を検討しています。

株式売却を希望する場合、会社の経営内容を確認したい場合、会社側から株式譲渡を求められた場合、株主としての地位自体に争いがある場合など、局面によって必要な対応は異なります。

まず、現在の持株状況、定款、株主名簿、決算書、過去の株主総会資料など、手元にある資料を確認するところから始めます。

 

当事務所では、
目の前の法的正解だけではなく、
初動・情報整理・損失配分・将来維持可能性を含めた現実判断を重視しています。

実際の紛争や経営判断では、初動で何を整理し、何を守り、何を優先するかという判断が、その後の結果を大きく左右します。

そのため、法律的な見通しをご説明するだけでなく、状況や選択肢を整理し、依頼者の方が納得して判断できるよう支援することを大切にしています。

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※本記事は、株式会社の少数株主に関する会社法上の主要な権利を一般的に整理したものです。すべての株主権を網羅するものではありません。具体的な要件は、会社の機関設計、会社法上の公開会社該当性、定款、株式の種類、持株期間、権利行使の目的などによって異なります。

前田 尚一(まえだ しょういち)
弁護士として35年以上の経験と実績を有し、これまでに多様な訴訟に携わってまいりました。顧問弁護士としては、常時30社を超える企業のサポートを直接担当しております。
依頼者一人ひとりの本当の「勝ち」を見極めることにこだわり、長年の経験と実践に基づく独自の強みを最大限に活かせる、少数精鋭の体制づくりに注力しています。特に、表面に見えない企業間の力学や交渉の心理的駆け引きといった実務経験は豊富です。 北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校、北海道大学法学部卒業。

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