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分野は違っても、見ていたものは同じだった――30数年の実務を振り返って

少数株主問題

会社支配権紛争

団体交渉

建設請負紛争

高額立退料

名誉毀損

私は30数年にわたり様々な案件を扱ってきました。

分野は違います。

登場人物も違います。

適用される法律も違います。

そのため、外から見ると全く別の仕事をしているように見えるかもしれません。

しかし振り返ると、私が見ていたものは同じだったように思います。

法律問題そのものではありません。

・誰が判断するのか。

・何を守り、その結果を引き受けるのか。

・どの時点で動くのか。

その判断の問題でした。

 

私は何を見てきたのか


裁判所が判断できる構造を作る

家業を法人化した会社における株主権確認訴訟があります。

表面上の争点は、

株式払込金を誰が出したのか。

という問題でした。

しかし実際には、

先代は誰に会社を承継させようとしていたのか。

家族はどのような関係にあったのか。

会社設立時に何が行われたのか。

という問題でした。

私は、単に「株主だ」と主張したわけではありません。

原告ら自身が払込義務を履行したという構成。

仮にそうでないとしても、父が原告らに代わって払込義務を履行したという構成。

主張を二段構えにしました。

裁判所は後者の構成を採用し、長男・長女の株主権を認めました。

振り返ると、私が行っていたのは法律論を述べることだけではありません。

裁判所がどの事実を認定し、どのような判断経路をたどれば実質に即した結論に到達できるのか。

その構造を整理することでした。


本当に守るべきものを見失わない

新聞報道によって市議会議員の名誉が大きく傷つけられた事件があります。

法律上の争点は名誉毀損でした。

しかし依頼者にとって本当に重要だったのは慰謝料額ではありません。

政治生命を守ること。

社会的信用を回復すること。

世間が誤った認識で固まることを防ぐこと。

それが本質でした。

訴訟は目的ではありません。

守るべきものを守るための手段でした。

法律問題の背後にある本当の目的を見失わないこと。

これも実務の現場で繰り返し求められることでした。


価格ではなく選択肢を整理する

非上場会社の少数株主が株式を売却した案件があります。

当初提示額の約7倍で売却できた事例です。

しかし私自身は、この案件を価格の話だとは考えていません。

その株式は何を意味するのか。

会社側は何を考えているのか。

依頼者は何を望んでいるのか。

誰と交渉するのか。

どの専門家が必要なのか。

それらを整理するところから始まりました。

価格は結果です。

その前に、どのような選択肢があり、何を基準に判断するのかを整理する必要がありました。


人生の出口設計を考える

高額立退料の案件もありました。

表面上は立退料の金額の問題です。

しかし現実にはそれだけではありません。

住み続けるのか。

移転するのか。

商売を続けるのか。

やめるのか。

これからの人生をどう設計するのか。

その判断が先にあります。

立退料は重要です。

しかし、それだけではありません。

人生全体の中で、その問題をどのように位置付けるのか。

そこが問われていました。


利害が衝突する場で判断する

団体交渉もそうです。

建設請負紛争もそうです。

それぞれの立場があり、

それぞれが守りたいものがあります。

要求内容だけを見ても、本質は見えません。

どこまで譲るのか。

どこは譲れないのか。

何を優先するのか。

その判断が結果を左右します。

そして、その判断の前提となる情報を整理することが必要になります。


当時は言葉になっていなかった

もっとも、若い頃からこのようなことを理論として考えていたわけではありません。

「判断構造」

「判断主体」

「専門家不足から判断者不足へ」

そのような言葉を使っていたわけではありません。

ただ、目の前の依頼者の問題に向き合っていました。

そして、

何が本当の問題なのか。

何を整理しなければならないのか。

誰が決めるべきなのか。

を考え続けていました。

後になって振り返ると、様々な案件で共通して行っていたことが見えてきたのです。


30数年を振り返って思うこと

近年、私は「専門家不足から判断者不足へ」ということを考えるようになりました。

AIによって情報収集や分析は容易になりつつあります。

しかし最後に、

何を守るのか。

何を捨てるのか。

どの結果責任を引き受けるのか。

を決める人は必要です。

振り返れば、私が30数年の実務で見てきたものもまた、その問題だったのだと思います。

少数株主問題。

会社支配権紛争。

団体交渉。

建設請負紛争。

高額立退料。

名誉毀損。

分野は違いました。

しかし見ていたものは同じでした。

法律問題ではありません。

判断の問題でした。

後になって振り返ると、私は法律問題を解いていたというより、判断の構造を整理する仕事をしていたのかもしれません。

だから私は近年、自分の仕事を「判断構造型弁護士」と呼んでいます。

法律問題はこれからも複雑化するでしょう。

AIによって情報はさらに増えるでしょう。

それでも最後に問われるのは、

何を守り、

何を選び、

その結果を引き受けるのかという判断です。

私は30数年の実務を振り返って、そう考えています。


当事務所では、
目の前の法的正解だけではなく、
初動・情報整理・損失配分・将来維持可能性を含めた現実判断を重視しています。
実際の紛争や経営判断では、何を守り、何を優先するかが結果を左右します。

※ 関連記事:

▶ 長く実務を続けていると、後から自分の仕事を説明できるようになることがある

▶ 私が見てきたのは、法律問題ではなく判断の結果だった

▶ 判断構造型弁護士とは何か――法律問題を解く前に、判断の構造を整理する

▶ 専門家不足から判断者不足へ

 

▶ 家業を法人化した会社における争い――株主権が認められた事例

▶ 少数株主の株式売却で本当に問われるのは価格だけなのか

▶ 社会的信用を守るために訴訟を提起した事例

 

[30数年の実務の共通項]

少数株主問題
名誉毀損
団体交渉
建設請負紛争
立退料
会社支配権

情報整理

判断

結果

30数年変わらなかったもの

前田 尚一(まえだ しょういち)
弁護士として30年以上の経験と実績を有し、これまでに多様な訴訟に携わってまいりました。顧問弁護士としては、常時30社を超える企業のサポートを直接担当しております。
依頼者一人ひとりの本当の「勝ち」を見極めることにこだわり、長年の経験と実践に基づく独自の強みを最大限に活かせる、少数精鋭の体制づくりに注力しています。特に、表面に見えない企業間の力学や交渉の心理的駆け引きといった実務経験は豊富です。 北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校、北海道大学法学部卒業。

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